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%#!texfot uplatex-dev
% TeX Live documentation (Japanese edition).
% English version is originally written by Sebastian Rahtz and
% Michel Goossens, now maintained by Karl Berry and others.
% Japanese edition is by Takuto Asakura. Public domain.
\RequirePackage{plautopatch}
\documentclass[uplatex,dvipdfmx,12pt,tombow]{jsarticle}
\usepackage{texlive-ja}
\Title{\TL ガイド 2024}
\Editor{Karl Berry}
\Translator{朝倉卓人(wtsnjp)}
\Website{https://tug.org/texlive/}
\date{2024年3月}
\begin{document}
\maketitle
\thispagestyle{empty}
\tableofcontents
\section*{訳者まえがき:日本語版『\TL ガイド』について}
この文書は毎年更新される\TL の公式ドキュメント\textsl{The {\TL} Guide}を個人が
翻訳したものです。内容としては\TL についてのごく初歩的な知識、インストール
方法、\TL マネージャを用いた\TL 管理方法が順番に解説され、さらに後半では\KPS
ライブラリの基礎や今日までの\TL における主な変更の履歴など、少し高級な事柄まで
が扱われています。
\TL ガイドは日本語を含め約10ヶ国語に翻訳されていることからもわかるように、
欧米圏のユーザのみならず全世界の\TL ユーザ向けの文書です。しかし、基礎的な解説
の中で言及されている\TeX 関連プログラムは主として欧文向けのものに限られ、この
日本語版\TL ガイドの読者がおそらく必要としているだろう、\TeX で和文を処理する
際に必要な情報は不足している部分があることを否めません。そのような情報を本翻訳
ドキュメントだけで完全に補完することは難しいですが、訳者が可能な範囲で、日本語
ユーザにとって有益と思われる補足情報をいくつかの「日本語\TeX ユーザ向けの
ノート」コラムや訳注の形で追加しています。
本翻訳ドキュメントについて、訳者は慎重な翻訳と技術的に正確な記述を心がけています
が、一部に不正確な翻訳や技術的に誤った記述が含まれている可能性があります。
本ドキュメントの内容に基づく運用結果については責任を負いかねますので、ご了承
ください。また具体的に翻訳が不適切な箇所等を見つけられましたら、ぜひ本翻訳
プロジェクトのGitHubリポジトリまでご報告をお願いします:
%
\begin{quote}
\url{https://github.com/wtsnjp/texlive-ja}
\end{quote}
最後に、本翻訳ドキュメントの作成にあたって八登祟之氏から多数のフィードバック
をいただきました。この場を借りて深く御礼申し上げます。
\section{イントロダクション}\label{sec:intro}
\subsection{\TL と\TeX コレクション}
このドキュメントはGNU/Linuxやその他のUnix系システム、macOS、Windows向けに
\TeX 関連プログラムを集めたディストリビューション\TL の概要について解説する
ものです。
この文書の読者は既にインターネット、{\TeX} Users Groupの配布する\TeX
コレクションDVDまたはその他の方法を利用して\TL を入手していることと思います。
\ref{sec:tl-coll-dists}節は\TeX コレクションDVDの収録物について簡単に説明して
います。\TL と\TeX コレクションは{\TeX} Users Group(TUG)の協力によって維持され
ています。このドキュメントは主として\TL それ自体を解説するものです。
\TL には\TeX, \LaTeXe, \ConTeXt, \MF, \MP, \BibTeX 実行プログラムはもちろん、
\TeX を拡張する多数のマクロパッケージやフォント、そしてそれらの付属ドキュメント
が含まれています。また、世界中で利用されるさまざまな言語における組版もサポート
されています。
\TL のバージョンごとの主な変更点については、このドキュメントの末尾にある
\ref{sec:history}節(\p.\pageref{sec:history})を参照してください。
\subsection{サポートOS}
\label{sec:os-support}
\TL にはGNU/Linux, macOS, Cygwinを含む、多くのUnix系プラットフォーム向けの
バイナリが含まれています。同梱されているソースを用いれば、デフォルトではサポート
されていないプラットフォームでコンパイルを行うこともできます。
Windowsについては、Windows~7以上のバージョンをサポートしています。いまのところ
Windows Vistaでも概ね動作する\emph{可能性があります}が、Windows XPよりも古いものに
ついては\TL のインストールすら成功しません。\TL はWindows向けには64-bitバイナリを
収録しています。
WindowsおよびmacOSに対する\TL 以外のディストリビューションについては\ref{sec:%
tl-coll-dists}節を参照してください。
\subsection{\TL のインストール(基本)}
\label{sec:basic}
\TL はDVDまたはインターネットを利用してインストールすることができます(\url{%
https://tug.org/texlive/acquire.html})。インターネット・インストーラ自体はとても
小さなプログラムで、これを実行すると必要とされるすべてのファイルをインターネット
からダウンロードします。
DVDインストーラはあなたのローカルディスクに\TL をインストールするものですが、
\TeX コレクションDVD上にある\TL のデータ(またはその\file{.iso}イメージ)
を直接実行することはできません。USBディスクなどにポータブルインストールを
行うことも\emph{可能です}(\ref{sec:portable-tl}節を参照)。インストールに
ついては後ほど詳述しますが(\p.\pageref{sec:install})、ここではクイック
スタートとして簡単に説明します:
\begin{itemize}
\item Unix系ではインストールスクリプトは\cmd{install-tl}です。Windowsでは
代わりに\cmd{install-tl-windows}を実行する必要があります。このプログラムに
\sopt{gui}オプションを与えると「GUIモード」(Windowsでデフォルト)、
\sopt{gui=text}を与えると「テキストモード」(その他のプラットフォームで
デフォルト)が実行されます。
\item \TL をインストールすると「\TL マネージャ」(\cmd{tlmgr})も利用可能になります。
インストーラと同様、このプログラムにもGUIモードとテキストモードがあります。\TL
マネージャを用いてパッケージのインストールやアンインストール、その他さまざまな設定
タスクを実行することができます。
\end{itemize}
\subsection{セキュリティについて}
\label{sec:security}
私たちの知る限り、\TeX の主要なプログラムそれ自体はとても堅牢です(今までもずっと
そうでした)。しかしながら、\TL に含まれる多数のサードパーティ製プログラムは、多く
の人の尽力があるとはいえ、それでも同じレベルには達していないかもしれません。一般論
ですが、信頼できない入力についてプログラムを実行する際は十分に注意してください。
なるべく安全に実行するためには、新しいサブディレクトリを作って実行したり、\cmd{%
chroot}を利用したりしてください。
この注意はWindowsについては特に重要です。なぜならWindowsは、検索パスの設定に
関わらず、常にカレントディレクトリにあるプログラムを他の何よりも優先して
実行するからです。この挙動はさまざまな攻撃に悪用される恐れがあります。我々は多くの
セキュリティホールを塞いできましたが、特にサードパーティ製プログラムについては、
間違いなくまだ残っているものが数多くあるでしょう。したがって、カレントディレクトリ
にある疑わしいファイル(特にバイナリとスクリプトファイル)は事前にチェックして
おくことを推奨します。悪意のあるファイルはそもそも存在するべきでありませんが、
単にドキュメントを処理するだけで生成されることなどあってはなりません。
最後に、\TeX (およびその周辺ツール)はドキュメントの処理中にファイル書き込みを
行うことができますが、その機能もまたさまざまな方法で利用され得ます。再度の注意に
なりますが、ご自身で作成されたわけではないドキュメントは、必ず新しい
サブディレクトリで実行するのが無難です。
セキュリティに関する別の観点として、ダウンロードしたファイルが元々作成されていた
ものから改変されていないかどうかということがあります。\prog{tlmgr}%
(\ref{sec:tlmgr}節)は\prog{gpg}(GNU Privacy Guard)が利用可能な場合、
ダウンロードしたファイルについて自動的に暗号理論に基づく検証を行います。
\prog{gpg}は\TL に含まれていませんが、このプログラムについての情報は
\url{https://texlive.info/tlgpg/}に記載してありますので必要に応じて参照して
ください。
\subsection{サポート情報}
\label{sec:help}
\TeX コミュニティはアクティブかつ友好的で、ほとんどの真剣な質問には回答を
得ることができます。しかしながら、こうしたサポートは非公式で、ボランティアや
一般の\TeX ユーザ有志によって行われているものですから、質問をする前にドキュメント
や過去のQ\&Aをよく読んで、まずはご自分で解決できるよう最善を尽くしましょう(もし
保証付きの有償サポートをご希望の場合は、\TL の採用は諦めて商用のシステムを
ご利用ください。\url{https://tug.org/interest.html#vendors}には\TeX に関連する
商用サービスを提供する団体の一覧があります)。
以下に\TeX 関連の情報源をリストアップしておきます。順番は概ねおすすめ順です:
%
\begin{description}
\item[はじめての方へ]
これからはじめて\TeX をお使いになる場合は\url{https://tug.org/begin.html}に
アクセスするとよいでしょう。\TeX システムについて簡潔なイントロダクションを
読むことができます。
\item[CTAN]
特定の\TeX パッケージやフォント、プログラム等を見つけたい場合はまずCTANで
探すとよいでしょう。これはあらゆる\TeX 関連の成果物を集めた巨大なコレクションです。
CTANカタログの個別ページでは、見つかったパッケージが\TL または\MIKTEX に含まれるか
どうかの情報も提供されています。\url{https://ctan.org/pkg/catalogue/}にアクセスして
みてください。
\item[{\TeX} FAQ]
\TeX に関するよくあるFAQを集めた巨大なデータベースで、初歩的な質問からとても難解な
質問まで含まれています。{\TeX} FAQはインターネット経由で利用することができます(\url{%
https://texfaq.org/})。
\item[ウェブ上の情報源]
ウェブサイト\url{https://tug.org/interest.html}には多数の\TeX 関連リンクが
集められています。特に\TeX システムに関わるさまざまな話題についての多くの書籍、
マニュアル、投稿記事を多数紹介しています。
\item[サポートサイト]
まずは通常のウェブ検索を試すことをおすすめします。\TeX に関する主要なサポートサイト
としては\LaTeX コミュニティ\url{https://latex.org}やQ\&Aサイト\url{https://tex.%
stackexchange.com}、Usenetニュースグループ\url{news:comp.text.tex}、メーリング
リスト\email{[email protected]}などが挙げられます。これらのアーカイブには何年分もの
質問と回答が蓄積されていますので、探してみるとよいでしょう。
\item[質問する]
もし答えの見つからない質問にぶつかったときは、\url{https://latex.org}や
\url{https://tex.stackexchange.com/}のウェブインターフェースや、メーリングリスト
\email{[email protected]}(購読せずに投稿して構いません)を通じて質問することも
できます。ただし、どこで質問を投稿するにしても、必ず事前に「質問のしかた」
(\url{https://texfaq.org/FAQ-askquestion})を読むようにしましょう。この内容に
従うことで、有効な回答を得られる可能性を飛躍的に高めることができます。
\item[\TL サポート]
もし\TL ディストリビューションに関してバグ報告や提案、コメントがある場合は
\TL メーリングリスト\email{[email protected]}にメールを投稿してください。ただし
\TL に含まれる個別のプログラムの使い方についての質問等は、\TL メーリングリスト
ではなく、各プログラムのメンテナや専用のメーリングリストに連絡するようにして
ください。多くの場合、プログラムを\lopt{help}オプション付きで実行するとバグ
報告用のメールアドレスを確認することができます。
\end{description}
%
\begin{janote}
上記リストは主に英語での情報提供・コミュニケーションを行う場所ですが、日本語
でのサポートが必要な場合は、次のようなウェブサイトが利用できます:
%
\begin{description}
\item[{\TeX} Wiki]
\url{https://texwiki.texjp.org/}は日本語で読めるものとしては\TeX 関連情報を集めた
最大の情報源です。現在は日本語\TeX 開発コミュニティ(texjporg)がサーバ管理を
行っていますが、あくまでWikiなので編集は誰でも行うことができ、掲載情報は必ずしも
公式のものではありません。
\item[{\TeX} Forum]
\url{https://okumuralab.org/tex/}は歴史の長いQ\&Aサイトで、現在も日本語で\TeX に
関連する質問ができる場所としては最もアクティブユーザが多く、熟練の\TeX ユーザが
多数参加しています。上記{\TeX} Wikiに日本語版の「質問のしかた」(\url{https://%
texwiki.texjp.org/?質問のしかた})ページがありますので、初めて質問を投稿する際は
必ず目を通すようにしましょう。
\item[スタック・オーバーフロー]
\url{https://ja.stackoverflow.com/}は\TeX に限らずあらゆる技術・プログラミング
関連の質問を投稿することができるQ\&AサイトStack Overflowの日本語版です。最近は
ここの\LaTeX タグ(\url{https://ja.stackoverflow.com/questions/tagged/latex})
にも少しずつ\TeX/\LaTeX 関連の質問が投稿されるようになってきています。
\end{description}
\end{janote}
\TeX ユーザは上記のような場所でサポートを受けることができる一方で、あなた自身が
他の質問者の手助けをすることも可能です。いずれのコミュニティも全世界に開かれた
ものですから、ぜひお気軽に参加・購読し、ヘルプが必要なユーザを助けてあげましょう。
\section{\TL の概要}
\label{sec:overview-tl}
このセクションでは\TL と\TeX コレクションの収録物について紹介します。
\subsection{\TeX コレクション: \TL, \MIKTEX, \MacTeX}
\label{sec:tl-coll-dists}
\TeX コレクションDVDには以下のものが含まれています:
\begin{description}
\item[\TL]
ディスクにインストールするための包括的でクロスプラットフォームな\TeX
ディストリビューションです。ウェブサイト:\url{https://tug.org/texlive/}
\item[\MacTeX]
macOS向けの\TeX システムで、\TL に専用のインストーラといくつかのMac用
アプリケーションを追加しています。ウェブサイト:\url{https://tug.org/mactex/}
\item[\MIKTEX]
これも包括的でクロスプラットフォームな\TeX ディストリビューションです。
Windows, GNU/Linux, macOSをサポートしていますが、DVDに含まれているのは
Windows向けのバイナリのみです。\MIKTEX は専用のパッケージマネージャを備えて
おり、必要なコンポーネントを必要に応じてインターネットからインストールする
ようになっています。ウェブサイト:\url{https://miktex.org/}
\item[CTAN]
CTANリポジトリ(\url{https://ctan.org/})のスナップショットです。CTANは\TL
と同じライセンスで配布されているわけではないので、再配布や変更を行う場合は
十分注意してください。
\end{description}
\subsection{\TL のトップレベルディレクトリ}
\label{sec:tld}
ここに\TL ディストリビューションのトップレベル(最上位階層)にあるディレクトリ
の一覧を示し、それぞれについて簡単に説明しておきます。
%
\begin{description}
\item[\dir{bin}]
\TeX 関連プログラムを格納しています。実行バイナリはプラットフォームによって
異なります。
\item[\dir{readme-*.dir}]
\TL の概要と有用なリンクを集めた多言語のREADMEを含んでいます。HTMLバージョンと
テキストバージョンがあります。
\item[\dir{source}]
\TL に含まれるすべてのプログラムのソースコードです。\Webc で記述された、\TeX
ディストリビューションのコアプログラムのソースコードも含まれています。
\item[\dir{texmf-dist}]
最も重要なTEXMFツリーです。詳しくは下にある\dir{TEXMFDIST}の項目を参照して
ください。
\item[\dir{tlpkg}]
インストールに必要なスクリプトやWindows向けの補助プログラムを含んでいます。
\end{description}
%
ドキュメントを探す際には、同じくトップレベルにある\file{doc.html}が役立ちます。
このファイルには\dir{texmf-dist/doc}以下に含まれるほとんどすべてのドキュメント
(パッケージ、フォーマット、フォント、プログラムのマニュアルやmanページなど)が
掲載されています。また\TL に含まれるドキュメントを検索するには\cmd{texdoc}%
コマンドを利用することもできます。
この\TL ガイド自体は\dir{texmf-dist/doc/texlive}以下にあり、多数の言語に翻訳
されています:
%
\begin{itemize}
\item チェコ・スロバキア語:\dir{texmf-dist/doc/texlive/texlive-cz}
\item ドイツ語\dir{texmf-dist/doc/texlive/texlive-de}
\item 英語:\dir{texmf-dist/doc/texlive/texlive-en}
\item フランス語:\dir{texmf-dist/doc/texlive/texlive-fr}
\item イタリア語:\dir{texmf-dist/doc/texlive/texlive-it}
\item 日本語:\dir{texmf-dist/doc/texlive/texlive-ja}
\item ポーランド語:\dir{texmf-dist/doc/texlive/texlive-pl}
\item ロシア語:\dir{texmf-dist/doc/texlive/texlive-ru}
\item セルビア語:\dir{texmf-dist/doc/texlive/texlive-sr}
\item スペイン語:\dir{texmf-dist/doc/texlive/texlive-es}
\item 簡体字中国語:\dir{texmf-dist/doc/texlive/texlive-zh-cn}
\end{itemize}
\subsection{いろいろなTEXMFツリー(概要)}
\label{sec:texmftrees}
この節では、システムに利用される種々のTEXMFツリーを指定するために予め定義
されている変数を一覧にし、それらの所期の目的および\TL でのデフォルト構成を
説明します。コマンド\code{tlmgr~conf}を実行するとこれらの変数の値が表示される
ので、各TEXMFツリーがあなたのコンピュータで実際にどのディレクトリを指し示す
のか容易に確認することができます。
個人用のものも含め、すべてのTEXMFツリーはその大量のサブディレクトリとともに
\TeX ディレクトリ構成(TDS, \url{https://tug.org/tds})にしたがうべきです。
TDSにしたがわない構成の場合、ファイルが見つからない可能性があります。詳細に
ついては\ref{sec:local-personal-macros}節(\p.\pageref{sec:local-personal-%
macros})を参照してください。ここで列挙するのはツリーが検索される順序の逆順
です。つまり、より後に登場するツリーによって、それより前のツリーの内容は上書き
されます。
%
\begin{description}
\item[\var{TEXMFDIST}]
このツリーには\TL ディストリビューション自体に含まれるほとんどのファイル
(設定ファイル、スクリプト、パッケージ、フォント、etc.)が配置されています。
(主な例外はプラットフォーム毎の実行バイナリで、それらはトップレベルの
\dir{bin}ディレクトリに配置されています。)
\item[\var{TEXMFSYSVAR}]
この(システム用の)ツリーは\cmd{texconfig-sys}, \cmd{updmap-sys}, \cmd{%
fmtutil-sys}, \cmd{tlmgr}などが、フォーマットや生成されたmapファイルなどの
実行時(キャッシュ)データを保存するためのものです。
\item[\var{TEXMFSYSCONFIG}]
この(システム用の)ツリーは\cmd{texconfig-sys}, \cmd{updmap-sys}, \cmd{%
fmtutil-sys}などが、変更された設定データを保存するために利用するものです。
\item[\var{TEXMFLOCAL}]
このツリーは、システム管理者が全ユーザに適用するためにマクロやフォントなどを
追加または更新して配置するためのものです。
\item[\var{TEXMFHOME}]
このツリーは、一般のユーザが独自に追加または更新したいマクロやフォントを配置する
ためのものです。この変数の参照先は、使用するユーザごとに固有のディレクトリです。
\item[\var{TEXMFVAR}]
この(ユーザ向けの)ツリーは\cmd{texconfig}, \cmd{updmap-user}, \cmd{fmtutil-%
user}などがフォーマットや生成されたmapファイルなどの実行時(キャッシュ)データ
を保存するためのものです。
\item[\var{TEXMFCONFIG}]
この(ユーザ向けの)ツリーは\cmd{texconfig}, \cmd{updmap-user}, \cmd{fmtutil-%
user}などが変更された設定データを保存するために利用するものです。
\item[\var{TEXMFCACHE}]
このツリーは\ConTeXt\ MkIVおよび\LuaLaTeX が実行時(キャッシュ)データを保存
するためのものです。デフォルトでは\var{TEXMFSYSVAR}(またはこれが書き込み
不能な場合は\var{TEXMFVAR})に設定されています。
\end{description}
\noindent
デフォルトの\TL 構成:
%
\begin{description}
\item[システム用ルート] 複数の\TL を配置できます
(デフォルト値はUnix系では\dir{/usr/local/texlive})
\begin{description}
\item[\dir{2023}] 前年のリリース
\item[\dir{2024}] 最新のリリース
\begin{description}
\item[\dir{bin}] ~
\begin{description}
\item[\dir{i386-linux}] GNU/Linux向けバイナリ (32-bit)
\item[\quad\vdots]
\item[\dir{universal-darwin}] macOS向けバイナリ
\item[\dir{x86_64-linux}] GNU/Linux向けバイナリ (64-bit)
\item[\dir{windows}] Windows向けバイナリ (64-bit)
\end{description}
\item[\dir{texmf-dist}] \var{TEXMFDIST}, \var{TEXMFMAIN}
\item[\dir{texmf-var}] \var{TEXMFSYSVAR}, \var{TEXMFCACHE}
\item[\dir{texmf-config}] \var{TEXMFSYSCONFIG}
\end{description}
\item[\dir{texmf-local}] \var{TEXMFLOCAL}(リリースに依存しません)
\end{description}
\item[ユーザのホームディレクトリ] (\dir{$HOME}または\winenv{USERPROFILE})
\begin{description}
\item[\dir{.texlive2023}] 前年リリースに適用するユーザごとのデータ(設定や生成物)
\item[\dir{.texlive2024}] 最新リリースに適用するユーザごとのデータ(設定や生成物)
\begin{description}
\item[\dir{texmf-var}] \var{TEXMFVAR}, \var{TEXMFCACHE}
\item[\dir{texmf-config}] \var{TEXMFCONFIG}
\end{description}
\item[\dir{texmf}] \var{TEXMFHOME}(ユーザごとのマクロなどを配置)
\end{description}
\end{description}
\subsection{\TeX の拡張エンジン}
\label{sec:tex-extensions}
Knuthによるオリジナルの\TeX は既に開発が終了しており、ごく稀にバグ修正が
入る程度です。\TL には現在もこのオリジナル処理系が\cmd{tex}として含まれており、
この状況は当面の間は変わることはないでしょう。一方で、\TL にはいくつかの\TeX を
拡張したエンジン(それらも\TeX 処理系と呼ばれています)も収録されています:
%
\begin{description}
\item[\eTeX]\label{text:etex}
この処理系ではいくつかの追加プリミティブ(主としてマクロ展開、文字列スキャン、
\cs{marks}クラス、デバッグに関わるもの)と双方向組版のための\TeXXeT 拡張が利用可能
です。デフォルトモードでは、\eTeX はオリジナルの\TeX と完全な互換性があります。
詳細については\file{texmf-dist/doc/etex/base/etex_man.pdf}を参照してください。
\item[\pdfTeX]
この処理系には、\eTeX の機能に加えてDVI同様にPDFを出力する機能と、その他出力とは
関係のない多数の追加機能が搭載されています。この処理系は、\cmd{etex}, \cmd{latex},
\cmd{pdflatex}など多くの一般的なフォーマット(コマンド)から呼び出されています。
\pdfTeX のウェブサイトは\url{https://tug.org/applications/pdftex/}です。\TL
にはマニュアル(\file{texmf-dist/doc/pdftex/manual/pdftex-a.pdf})と\pdfTeX の
拡張機能の利用例を示した文書(\file{texmf-dist/doc/pdftex/samplepdftex/%
samplepdf.tex})も収録されています。
\item[\LuaTeX]
Unicodeによる入力とOpenType\slash TrueTypeフォントおよびシステムフォントのサポート
を追加した処理系です。この\TeX エンジンには軽量スクリプト言語Lua(\url{%
https://www.lua.org/})のインタプリタが組み込まれており、\TeX における厄介な問題に
対処するのにとても役立ちます。\cmd{texlua}として呼び出した場合は独立のLua処理系の
ように振る舞います。ウェブサイト:\url{https://luatex.org/}、マニュアル:\file{%
texmf-dist/doc/luatex/base/luatex.pdf}。
\item[($\varepsilon$-)(u)\pTeX]
日本語組版をネイティブにサポートする処理系です。\pTeX がベースですが、\eTeX 拡張
が利用可能な\epTeX とUnicodeサポートを含む\upTeX もあります(詳細はこのリストの
下のコラムを参照)。
\item[\XeTeX]
Unicodeによる入力とOpenType\slash TrueTypeフォントおよびシステムフォントの利用を
サードパーティ製のライブラリを利用してサポートする\TeX 処理系です。
ウェブサイト:\url{https://tug.org/xetex}。
\item[{\OMEGA} (Omega)]
Unicode(16-bit文字)ベースの処理系で、すなわち世界中のほとんどあらゆる言語で
用いられる文字に対応しています。この処理系はいわゆるOmega Translation Processes
(OTPs)もサポートしており、任意の入力について複雑な組版処理を施すことも可能です。
\item[{\ALEPH} (Aleph)]
Omegaと\eTeX を組み合わせた処理系です。詳細については\dir{texmf-dist/doc/aleph/%
base}を参照してください。
\end{description}
%
\begin{janote}
日本語組版向けに開発された\pTeX 系の処理系を除いては、欧文組版を行うために
開発されたもので、多くがそのままでは日本語組版には適しません。\TL に含まれる
処理系の中で、日本語組版に適したものを以下に列挙します。
%
\begin{description}
\item[\pTeX]
Knuthによるオリジナルの\TeX 処理系を日本語組版用に拡張したものです。和文フォントを
扱うことができるように拡張されているほか、禁則処理や縦組みにも対応しています。詳細に
ついては\file{texmf-dist/doc/ptex/ptex-manual/ptex-manual.pdf}を参照してください。
\item[\upTeX]
\pTeX の派生エンジンで、内部コードがUnicodeに変更されています。基本的には\upTeX は
\pTeX の上位互換となっており、UTF-8入力が活用できるのみならず、他にもいくつかの
機能が追加されています。
\item[\epTeX, \eupTeX]
\pTeX と\upTeX に\eTeX 相当の拡張機能を追加したエンジンです。現在\TL に含まれる
\cmd{platex}, \cmd{uplatex}コマンドではデフォルトでこれらの処理系が呼び出されます。
最近は\pdfTeX 由来の機能も一部利用できます。詳細は\file{texmf-dist/doc/ptex/ptex-%
base/eptexdoc.pdf}を参照してください。
\end{description}
%
また\LuaTeX-jaというマクロパッケージを用いると\LuaTeX でも日本語組版を実現できます。
詳しくはウェブサイト\url{https://ja.osdn.net/projects/luatex-ja/}またはドキュメント
\file{texmf-dist/doc/luatex/luatexja/luatexja-ja.pdf}を参照してください。
\end{janote}
\subsection{\TL に含まれるその他の著名なソフトウェア}
ここに少しですが、\TL に含まれていて、よく利用されるプログラムを列挙しておきます:
%
\begin{cmddescription}
\item[bibtex, biber]
参考文献リストの作成を補助するプログラム。
\item[makeindex, xindex, xindy]
索引の作成を補助するプログラム。
\item[dvips]
DVIを\PS に変換するプログラム。
\item[dvipdfmx]
DVIをPDFに変換するプログラム。先述の\pdfTeX とは別のアプローチを提供するもの。
\item[xdvi]
X Windowsシステム向けのDVIビューア。
\item[dviconcat, dviselect]
DVIのページを切り貼りするためのプログラム。
\item[psselect, psnup, \ldots]
\PS ユーティリティ。
\item[pdfjam, pdfjoin, \ldots]
PDFユーティリティ。
\item[context, mtxrun]
\ConTeXt とPDFプロセッサ。
\item[htlatex, \ldots]
\cmd{tex4ht}は\AllTeX をHTML, XML, DocXなどに変換するプログラム。
\end{cmddescription}
\begin{janote}
日本では、上記に加えて次のプログラムもよく用いられます:
%
\begin{cmddescription}
\item[pbibtex, upbibtex]
\cmd{bibtex}を日本語用に拡張したもの。
\item[mendex, upmendex]
\cmd{makeindex}を日本語用に拡張したもの。
\end{cmddescription}
\end{janote}
\section{\TL のインストール}
\label{sec:install}
\subsection{インストーラの入手と起動}
\label{sec:inst-start}
\TL をインストールするためには、まず\TeX コレクションDVDを入手するか\TL の
インターネット・インストーラをダウンロードします。より詳細な情報や\TL を入手
するその他の方法については\url{https://tug.org/texlive/acquire.html}を参照して
ください。
%
\begin{description}
\item[インターネット・インストーラ(\file{.zip}または\file{.tar.gz})]
CTANの\dir{systems/texlive/tlnet}配下からダウンロードできます。\url{http://%
mirror.ctan.org/systems/texlive/tlnet}にアクセスすると、最寄りの最新ミラーに
リダイレクトされるはずです。\file{install-tl.zip}(Unix系およびWindows向け)、
またはそれよりもかなりファイルサイズの小さい\file{install-unx.tar.gz}(Unix系
専用)のお好きな方をダウンロードしてください。ダウンロードしたアーカイブを展開
すると\dir{install-tl}サブディレクトリ以下に\file{install-tl}および\file{%
install-tl-windows.bat}が見つかるはずです。
\item[インターネット・インストーラ(Windows用\file{.exe})]
上と同様にCTANからダウンロードし、ダブルクリックしてください。すると、
インストーラの最初の画面(図\ref{fig:nsis})が表示されるはずです。この画面では
「インストール」または「展開のみ」のいずれかを選ぶことができます。
\item[\TeX コレクションDVD]
DVD内の\dir{texlive}サブディレクトリを開いてください。Windowsでは、通常DVD
を挿入するとインストーラが自動的に起動するはずです。{\TeX} Users Group(TUG)の
会員になるか(\url{https://tug.org/usergroups.html})、TUGのオンラインストア
(\url{https://tug.org/store})で個別に購入するとDVDを手に入れることができます。
また、CTANで配布されているISOイメージからご自身でDVDに焼くことも可能です。
DVDまたはISOから\TL をインストールした後、インターネットを利用して継続的に
アップデートを行いたい場合は\ref{sec:dvd-install-net-updates}節を参照してください。
\end{description}
%
\begin{figure}[tb]
\tlpng{nsis_installer}{.6\linewidth}
\caption{Windows用インストーラ(\code{.exe})の初期画面。}
\label{fig:nsis}
\end{figure}
いずれの手段でインストーラを入手しても、まったく同じプログラムが起動します。
入手方法の違いによって生じる差異のうち、ユーザにとって最も重要なことは、
インターネット・インストーラを利用した場合はすべてのパッケージについて入手可能
な最新バージョンがインストールされますが、DVDやISOイメージを用いた場合には
年に一度のパブリックリリース時点での最新版がインストールされるということです。
もしプロキシを利用してダウンロードする必要がある場合は、\file{~/.wgetrc}ファイル
または環境変数を利用してWgetに対して適切なプロキシ設定を行うか(\url{https://%
www.gnu.org/software/wget/manual/html_node/Proxies.html})、もしくはお好みで他の
ダウンロード用ツールを利用してください。DVDやISOイメージからインストールを行う
場合は、プロキシ設定について気にする必要はありません。
以降のセクションでは、このインストーラの使い方について詳しく説明します。
\subsubsection{Unix系}
以降では\code{>}はシェル・プロンプトを表し、ユーザの入力はタイプライタ体で
\code{command}のように表現することにします。\TL のインストーラ\cmd{install-%
tl}はPerlスクリプトです。Unix系システムでこのスクリプトを起動する最も簡単
な方法は以下を実行することです\footnote{もちろん、実行権限を与えていれば
単に\code{/path/to/installer/install-tl}として起動することもできますし、
事前に\cmd{cd}で\cmd{install-tl}のあるディレクトリに移動しても構いません。
以降では、そのようなバリエーションについて逐一言及はしません。}:
%
\begin{alltt}
> perl /path/to/installer/install-tl
\end{alltt}
%
ところで、インストーラのメッセージを見やすく表示するためには、ターミナルの
ウィンドウサイズは十分に大きくしておいてください(図\ref{fig:text-main})。
インストーラをGUIモードで起動するためには、予めTcl/Tkをインストールしておく
必要があります。その上で、次のようにするとGUIモードで起動できます:
%
\begin{alltt}
> perl install-tl -gui
\end{alltt}
古い\sopt{wizard}, \lopt{perltk}, \lopt{expert}オプションは現在では\sopt{gui}%
と等価になっています。利用可能なすべてのオプションを確認するには次を実行して
ください:
%
\begin{alltt}
> perl install-tl -help
\end{alltt}
\paragraph{Unixのパーミッションについて}
\TL インストーラは、実行時の\cmd{umask}設定を反映します。したがって、もし利用
中のユーザだけでなく他のユーザも利用可能な形で\TL をインストールしたい場合は、
\code{umask 002}など適切なパーミッション設定になっているかよく確認してください。
\cmd{umask}コマンドの詳細については、システムのマニュアルを参照してください。
\paragraph{Cygwinへの注意}
他のUnix系システムと異なり、Cygwinにはデフォルトでは\TL インストーラの実行に
必要なプログラムの一部が含まれていません。詳細は\ref{sec:cygwin}節を参照して
ください。
\subsubsection{macOS}
\label{sec:macos}
\ref{sec:tl-coll-dists}節でも言及したように、macOSには\MacTeX という専用の
ディストリビューションがあります(\url{https://tug.org/mactex})。\MacTeX の
インストーラはmacOS向けにいくつかの最適化をしている(たとえば、いわゆる
「{\TeX}Distデータ構造」を利用してMac上の複数の\TL リリースを簡単に切り替える
機能があります)ので、\TL インストーラを利用するよりも、\MacTeX を利用した
インストールをおすすめします\footnote{訳注:ただし敢えて\TL インストーラを
利用することも可能です。}。
\MacTeX は完全な\TL ベースのディストリビューションで、主要な\TeX ツリーと
含まれる実行バイナリはまったく同一です。通常の\TL に、macOS専用のドキュメント
とアプリケーションがいくつか追加されています。
\subsubsection{Windows}\label{sec:wininst}
もしZIPファイルをご自身でダウンロードして展開した場合やDVDを挿入しても自動的に
インストーラが起動しなかった場合は、\file{install-tl-windows.bat}をダブルクリック
してください。
もしくは、コマンドプロンプトを利用してインストーラを起動することも可能です。以下
では\code{>}はプロンプトを表し、ユーザの入力はタイプライタ体で\code{command}の
ように表現することにします。もし、既にインストーラのあるディレクトリにいる場合は
単に
%
\begin{alltt}
> install-tl-windows
\end{alltt}
%
を実行してください。もちろん絶対パスを指定して起動することも可能です。例えば、
\TeX コレクションDVDを利用していて、その光学ドライブが\dir{D:}であれば:
%
\begin{alltt}
> \winpath{D:\\texlive\\install-tl-windows}
\end{alltt}
%
図\ref{fig:installer-basic}はGUIインストーラ(Windowsではデフォルト)の初期画面を
示しています。
テキストモードでのインストールを行いたい場合は次のようにしてください:
%
\begin{alltt}
> install-tl-windows -no-gui
\end{alltt}
すべてのオプションを表示するには以下を実行してください:
%
\begin{alltt}
> install-tl-windows -help
\end{alltt}
\noindent
\emph{ノート}:同じディレクトリに\file{install-tl-windows.exe}が存在している場合は、
起動時に拡張子\code{.bat}を付けてください。もっとも、基本的にはそのような状態には
ならないはずです例外はローカルに\dir{tlnet}ディレクトリをミラーしている場合です。
\TL のインストールパスに非ASCII文字を含めることは、必ず避ける必要があります。これは
特に、Microsoftネットワークアカウントの使用を強要されるWindows~11で問題となり得ます。
回避策については\url{https://tug.org/texlive/windows.html\#nonascii}を参照してください。
\begin{figure}[tb]
\begin{boxedverbatim}
Installing TeX Live 2024 from: ...
Platform: x86_64-linux => 'GNU/Linux on x86_64'
Distribution: inst (compressed)
Directory for temporary files: /tmp
...
Detected platform: GNU/Linux on Intel x86_64
<B> binary platforms: 1 out of 16
<S> set installation scheme: scheme-full
<C> customizing installation collections
40 collections out of 41, disk space required: 8296 MB (free: 138718 MB)
<D> directories:
TEXDIR (the main TeX directory):
/usr/local/texlive/2024
...
<O> options:
[ ] use letter size instead of A4 by default
...
<V> set up for portable installation
Actions:
<I> start installation to hard disk
<P> save installation profile to 'texlive.profile' and exit
<H> help
<Q> quit
\end{boxedverbatim}
\vskip-.5\baselineskip
\caption{\TL インストーラのテキストモードでのメイン画面(GNU/Linux)}
\label{fig:text-main}
\end{figure}
\begin{figure}[tb]
\tlpng{basic-macos-ja}{.6\linewidth}
\caption{\TL インストーラの基本画面(macOS)。「高度な設定」ボタンを押すと図\ref{%
fig:installer-advanced}のような画面に切り替わります。}\label{fig:installer-basic}
\end{figure}
\begin{figure}[tb]
\tlpng{advanced-macos-ja}{\linewidth}
\caption{\TL インストーラGUIモードの「高度な設定」画面(macOS)}
\label{fig:installer-advanced}
\end{figure}
\subsubsection{Cygwin}
\label{sec:cygwin}
Cygwinでは、\TL のインストールを始める前に\file{setup.exe}プログラムを用いて
(もし未導入の場合は)\prog{perl}と\prog{wget}をインストールするようにしてくだ
さい。また以下のパッケージも予めインストールしておくことをおすすめします:
%
\begin{itemize}
\item \prog{fontconfig}(\XeTeX と\LuaTeX のため)
\item \prog{ghostscript}(多くの\TeX エンジンのため)
\item \prog{libXaw7}(\prog{xdvi}のため)
\item \prog{ncurses}(インストーラの\code{clear}コマンドの実行に必要)
\end{itemize}
\subsubsection{テキストモード}
図\ref{fig:text-main}はUnix系におけるテキストモードのメイン画面を示しています。
テキストモードはUnix系ではデフォルトです。
このモードは、完全にコマンドラインで完結するもので、カーソルによる操作のサポートは
まったくありません。例えば、Tabキーによってチェックボックスや入力フォーム間を移動
することはできません。インストール操作はすべて、プロンプトに文字をタイプ(大文字と
小文字は区別されます)してEnterキーを押すことによって行います。ターミナルの画面は、
入力にしたがって適切に遷移していきます。
テキストモードのインターフェースは、最小限のPerlしかない環境を含めなるべく多く
のプラットフォームで動作するようとても原始的に作られています\footnote{訳注:GUIモード
は日本語を含む多言語に対応していますが、テキストモードは英語のみです。}。
\subsubsection{GUIモード}
\label{sec:graphical-inst}
GUIモードはデフォルトではわずかなオプションのみを提供するシンプルな画面で
スタートします(図\ref{fig:installer-basic})。GUIモードを起動するには
%
\begin{alltt}
> install-tl -gui
\end{alltt}
%
を実行します。「高度な設定」ボタンを押すとテキストモードとほぼ同程度のオプションを
提供する画面に切り替わります(図\ref{fig:installer-advanced})。
\subsubsection{その他のレガシーなモード}
古い\code{perltk}モード、\code{expert}モード、\code{wizard}モードは現在もPerl/Tkが
インストールされていれば利用可能です。これらはそれぞれインストーラに\sopt{gui=%
perltk}や\sopt{gui=wizard}オプションを与えると起動できます。
\subsection{インストーラの操作方法}
\label{sec:runinstall}
インストーラは直感的に操作できるように設計されていますが、このセクションでは多様な
オプションやサブメニューについて簡単に説明します。
\subsubsection{バイナリ選択メニュー(Unix系のみ)}
\label{sec:binary}
\begin{figure}[tb]
\begin{boxedverbatim}
Available platforms:
===============================================================================
a [ ] Cygwin on x86_64 (x86_64-cygwin)
b [ ] MacOSX current (10.14-) on ARM/x86_64 (universal-darwin)
c [ ] MacOSX legacy (10.6-) on x86_64 (x86_64-darwinlegacy)
d [ ] FreeBSD on x86_64 (amd64-freebsd)
e [ ] FreeBSD on Intel x86 (i386-freebsd)
f [ ] GNU/Linux on ARM64 (aarch64-linux)
g [ ] GNU/Linux on RPi(32-bit) and ARMv7 (armhf-linux)
h [ ] GNU/Linux on Intel x86 (i386-linux)
i [X] GNU/Linux on x86_64 (x86_64-linux)
j [ ] GNU/Linux on x86_64 with musl (x86_64-linuxmusl)
k [ ] NetBSD on x86_64 (amd64-netbsd)
l [ ] NetBSD on Intel x86 (i386-netbsd)
m [ ] Solaris on Intel x86 (i386-solaris)
o [ ] Solaris on x86_64 (x86_64-solaris)
p [ ] Windows (64-bit) (windows)
\end{boxedverbatim}
\vspace{-1zh}
\caption{バイナリ選択メニュー}\label{fig:bin-text}
\end{figure}
図\ref{fig:bin-text}はテキストモードのバイナリ選択メニューを示しています。デフォルト
ではインストーラ実行時に使用中のプラットフォーム向けのバイナリだけがインストール
されます。このメニューを利用すると、その他のプラットフォーム向けのバイナリも同様に
インストールすることを選択することができます。このメニューは\TeX ツリーをさまざまな
環境に共通のネットワークで共有する場合やデュアルブートシステムでは有用です。
\subsubsection{スキーム・コレクションの選択}
\label{sec:components}
\begin{figure}[tbh]
\begin{boxedverbatim}
Select scheme:
===============================================================================
a [X] full scheme (everything)
b [ ] medium scheme (small + more packages and languages)
c [ ] small scheme (basic + xetex, metapost, a few languages)
d [ ] basic scheme (plain and latex)
e [ ] minimal scheme (plain only)
f [ ] infrastructure-only scheme (no TeX at all)
g [ ] book publishing scheme (core LaTeX and add-ons)
h [ ] ConTeXt scheme
i [ ] GUST TeX Live scheme
j [ ] teTeX scheme (more than medium, but nowhere near full)
k [ ] custom selection of collections
\end{boxedverbatim}
\vspace{-1zh}
\caption{スキーム選択メニュー}\label{fig:scheme-text}
\end{figure}
図\ref{fig:scheme-text}は\TL のスキーム選択メニューです。これによって、お好きな
スキーム(パッケージコレクションのセット)を選んでインストールを行うことができます。
デフォルトでは\TL で利用可能なすべてのパッケージを含む\pkg{full}スキームが
インストールされます。おすすめはこの\pkg{full}スキームですが、純粋なplain \TeX
と\LaTeX だけを使用するなら\pkg{basic}、それに少しプログラムを追加したものである
\pkg{small}(これは\MacTeX におけるBasic\TeX と同等です)、単なるテスト目的なら
\pkg{minimal}、あるいはそれらの中間にあたるものが欲しければ\pkg{medium}や
\pkg{teTeX}スキームを選択することもできます。その他にも、多数の目的別もしくは
言語別のスキームが用意されています。
\begin{figure}[tb]
\centering \tlpng{stdcoll-ja}{.7\linewidth}
\caption{コレクション選択メニュー}\label{fig:collections-gui}
\end{figure}
コレクション選択メニュー(図\ref{fig:collections-gui})を活用すると選択したスキーム
をさらに利用目的に応じて最適化することができます\footnote{訳注:\pkg{full}スキーム以外
のスキームには日本語組版に必要な\pTeX 系エンジンや\LuaTeX-jaなどは含まれていません。
したがって\pkg{full}スキーム以外のスキームを選択した場合、日本語組版を行うため
には原則として日本語コレクション(\pkg{collection-langjapanese})を追加する必要が
あります。}。
コレクションはスキームよりも細かなパッケージのセットです。基本的には、スキームという
のはいくつかのコレクションを集めたもので、コレクションは1つまたは複数のパッケージを
まとめたものです。パッケージは\TL におけるプロダクトの最小単位で、具体的には実際の
\TeX マクロファイルやフォントファイルから成るものです。
もしコレクション選択メニューが提供するよりもさらに細かくインストールするものを制御
したい場合は、インストール後に\TL マネージャ(\cmd{tlmgr})を使用してください。
\TL マネージャを利用すればパッケージ単位でインストールを行うことが可能です。
\subsubsection{インストール先ディレクトリ}
\label{sec:directories}
デフォルトの\TL 構成については\ref{sec:texmftrees}節(\p.\pageref{sec:texmftrees})
で説明しました。デフォルトのインストール先はUnix系では\dir{/usr/local/texlive/2024}、
Windowsでは\winpath{\winenv{SystemDrive}\\texlive\\2024}です。この配置は複数の\TL
を同時にインストールすることを可能にします。例えば複数のリリース(典型的には、年度
ごと)の\TL をインストールしておき、単純に検索パスを変更することによってどの
リリースを使用するか切り替えるようなことができます。
インストール先のディレクトリはインストーラにおける\code{TEXDIR}を設定することに
よって変更することができます。GUIモードで\code{TEXDIR}やその他のオプションを設定
するための画面は図\ref{fig:installer-advanced}に示されています。インストール先を
変更する必要があるのは、デフォルトのインストール先にあたるパーティションに十分な
空き容量がない場合\footnote{\TL をフルインストールするには数GBの容量が必要となり
ます。}や書き込み権限がない場合です\footnote{\TL をインストールするのに管理者
(root)権限は必要ありませんが、インストール先ディレクトリへの書き込み権限は必要
です。}。
Windowsでは、通常\winpath{C:\\texlive\\2024}(より一般的に言えば\winpath{%
\winenv{SystemDrive}\\texlive\\2024})を作成するのに管理者権限は必要ありません。
インストール先のディレクトリは、インストーラを実行する前にいくつかの環境変数(よく
用いられるのは\var{TEXLIVE\_INSTALL\_PREFIX}と\var{TEXLIVE\_INSTALL\_TEXDIR})を
設定することによっても変更できます。詳細については\code{install-tl \lopt{help}}に
より表示できるドキュメント(\url{https://tug.org/texlive/doc/install-tl.html})を
参照してください。
合理的なインストール場所の変更先は(特にあなたが\TL を利用する単独のユーザである
場合には)ホームディレクトリ以下でしょう。メタ文字\dir{~}(チルダ)を用いるとこれを
簡単に指定することができます(例:\dir{~/texlive/2024})。
複数の\TL リリースを同時にインストールできるようにするためにも、インストール先の
ディレクトリ名には「年」を含めることをおすすめします(もし\dir{/usr/local/texlive-%
cur}などバージョンに依存しない名前で管理したいとお考えであれば、シンボリックリンク
を利用して新しいリリースをテストしてからそのリンク先を変更するようにするのも良い
でしょう)。
インストーラにおける\code{TEXDIR}を変更すると\code{TEXMFLOCAL}, \code{TEXMFSYSVAR},
\code{TEXMFSYSCONFIG}にあたるディレクトリも合わせて変更されることになります。
\code{TEXMFHOME}はユーザごとのマクロファイルやパッケージを配置するのに適した場所で、
デフォルトでは\dir{~/texmf}です(macOSでは\dir{~/Library/texmf})。\code{TEXDIR}%
の場合とは異なり、\TeX を実行しているユーザのホームディレクトリを簡単に参照できる
ように、このデフォルト値では\dir{~}が各々のインストールのために生成された設定
ファイルに書き込まれています。\dir{~}はUnix系では\dir{$HOME}に、Windowsでは\winenv{%
USERPROFILE}にそれぞれ展開されます。繰り返しの注意になりますが、\code{TEXMFHOME}%
も他のTEXMFツリーと同様にTDSにしたがった構成になっているべきです(必要のないファイル
やディレクトリは配置されていなくも構いません)。
\code{TEXMFVAR}はほとんどの(ユーザごとの)実行時キャッシュが保存される場所です。
\code{TEXMFCACHE}は\LuaLaTeX と{\ConTeXt} MkIVが使用するための変数で、デフォルト
では\code{TEXMFSYSVAR}または(もし\code{TEXMFSYSVAR}が書き込み可能でない場合は)
\code{TEXMFVAR}に設定されています。詳細は\ref{sec:context}節(\p.\pageref{%
sec:context})を参照してください。
\subsubsection{オプション}
\label{sec:options}
\begin{figure}[tbh]
\begin{boxedverbatim}
Options customization:
===============================================================================
<P> use letter size instead of A4 by default: [ ]
<E> execution of restricted list of programs: [X]
<F> create all format files: [X]
<D> install font/macro doc tree: [X]
<S> install font/macro source tree: [X]
<L> create symlinks in standard directories: [ ]
binaries to:
manpages to:
info to:
<Y> after install, set CTAN as source for package updates: [X]
\end{boxedverbatim}
\vskip-.5\baselineskip
\caption{Options menu (Unix)}\label{fig:options-text}
\end{figure}
図\ref{fig:options-text}はテキストモードにおけるオプションメニューです。以下に
各オプションの詳細を列挙します:
%
\begin{description}[style=unboxed]
\item[use letter size instead of A4 by default%
(A4サイズの代わりにレターサイズをデフォルトで使用)]
デフォルトの用紙サイズを選択します。当然ながら、各ドキュメントのサイズはその都度
ドキュメントに合わせて指定することもできます。
\item[execution of restricted list of programs%
(制限リストにあるプログラムの実行を許可)]
\TL{} 2010以降、いくつかの外部プログラムの実行がデフォルトで許可されるようになり
ました。実行が許可されている(数少ない)プログラムのリストは\file{texmf.cnf}に
記載されています。詳細については\TL{} 2010のリリースノート(\ref{sec:2010news}%
節)を参照してください。
\item[create all format files(すべてのフォーマットファイルを作成)]
このオプションは有効にしておくことを推奨します。このオプションを無効にした場合、
各ユーザがフォーマットを使用したいときにフォーマットが動的に生成され、無用な
問題を生じる可能性があります。詳細は\prog{fmtutil}のドキュメントを参照してください。
\item[install font/macro \dots\ tree%
(フォント・マクロの 〜 ツリーをインストール)]
多くのパッケージに付属するソースファイルとドキュメントをダウンロード・インストール
するか否かを選択するオプションです。このオプションを無効化することは非推奨です。
\item[create symlinks in standard directories%
(標準ディレクトリにシンボリックリンクを作成)]
このオプションはUnix系のみで利用可能で、環境変数の変更を回避する手段です。この