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<title>願っただけで馬が手に入るなら: ロジバンの接続システム - The Lojban Reference Grammar</title>
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<div class="nav-prev">
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<div class="nav-section-name">第13章</div>
</div>
<div class="nav-next">
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<div class="nav-section-name">第15章</div>
</div>
<div class="nav-title">
<div class="nav-title-title">第14章 願っただけで馬が手に入るなら: ロジバンの接続システム</div>
<div class="nav-title-link"><a href="../">目次</a></div>
</div>
</div>
<hr />
<h2>第14章<br />
願っただけで馬が手に入るなら: ロジバンの接続システム
</h2>
<h3>1. 論理接続と真偽表</h3>
<p>その名が示すように、ロジバンは論理的な言語である。通常の論理学では、真偽値を表明する「文」(もしくは「命題」)と、文をつないで新たな文を作る「真偽関数」がある。この文の真偽値は個々の文の真偽値のみから求められる。例えば:</p>
<pre>
<a id="e1" name="e1">1.1)</a> ジョンは男性、もしくは、ジェームズは女性。
</pre>
ここで、「ジョンは男性」もしくは「ジェームズは女性」が成り立てば、上記の文は真となる。
<p>文を否定する、ということは、その真偽値を逆転させることである。英語であれば、”It is false that...”「というのは真ではない」を文頭に付けるか、“not”を正しい場所に挿入することで否定できる。</p>
<p>「もしくは」のような単語は「論理接続詞」と呼ばれ、ロジバンにはたくさんある。英語にも “and”“and/or”“if”“only if”“whether or not”などの接続詞があるが、これらが全て論理接続詞に対応するわけではない。論理接続詞ではない用法は、ロジバンの他の接続構造によってサポートされる。</p>
<p>ロジバンの接続詞は、章のタイトル通り規則的な「システム」を構成しているが、自然言語の場合そうではなく、規則的ではなく予測不可能な面がある。</p>
<p>可能な真偽関数には16種類ある。以下は“or”の真偽表である:</p>
<table class="or">
<tr>
<th>引数1</th>
<th>引数2</th>
<th>結果</th>
</tr>
<tr>
<td>真</td>
<td>真</td>
<td>真</td>
</tr>
<tr>
<td>真</td>
<td>偽</td>
<td>真</td>
</tr>
<tr>
<td>偽</td>
<td>真</td>
<td>真</td>
</tr>
<tr>
<td>偽</td>
<td>偽</td>
<td>偽</td>
</tr>
</table>
<p>この表(の最初の行)が意味するのは、1個目の文が真であり2個目の文も真であれば論理関数の結果も真となるということである。両方の文が偽である場合を除き、同様に結果は真となる。</p>
<p>「ジョンは男性である」が真であり (つまり「ジョンは男性ではない」は偽)、「ジェームズは女性である」が偽である (つまり「ジェームズは女性ではない」が真)とすると、</p>
<pre>
「ジョンは男性である, もしくは ジェームズは女性ではない」 (真, 真 ) →真
「ジョンは男性である, もしくは ジェームズは女性である」 (真, 偽 ) →真
「ジョンは男性ではない, もしくは ジェームズは女性ではない」 (偽, 真 ) →真
「ジョンは男性ではない, もしくは ジェームズは女性である」 (偽, 偽 ) →偽
</pre>
実は、この表で表されている「もしくは」“or”は、正式な英語で言うところの“and/or”である。「AかBのどちらか、ただし、両方ではない」を表す「もしくは」“or”はまた別の表になる。
<p>スペースの節約のために、以降はこの真偽表を短く書き表す。真=T、偽=Fと書き、表の2文の真偽値の順番は必ず: TT, TF, FT, FF とすると、結果の列の4つの文字を書くだけで良いことになる。よって、真偽関数「もしくは」の真偽表は TTTF となる。以下は、可能な16種類の真偽関数の一覧である:</p>
<pre>
TTTT いつも真
TTTF 第1文が真 もしくは 第2文が真。
TTFT もし第2文が真なら、第1文が真。
TTFF 第2文が真か偽かに関わらず、第1文が真。
TFTT 第2文が真の時に限って、第1文が真。
TFTF 第1文が真か偽かに関わらず、第2文が真。
TFFT 第1文が真ならば、またその時に限って、第2文が真。
TFFF 第1文が真 かつ 第2文が真。
FTTT 第1文と第2文が同時に真ではない。
FTTF 第1文か第2文が真であるが、同時に真ではない。
FTFT 第1文が真か偽かに関わらず、第2文が偽。
FTFF 第1文が真 かつ 第2文が偽。
FFTT 第2文が真かどうかに関わらず、第1文が偽。
FFTF 第1文が偽 かつ 第2文が真。
FFFT 第1文も第2文も真ではない。
FFFF いつも偽。
</pre>
※訳注:章タイトルの「願っただけで馬が手に入るなら」は、「願っただけで馬が手に入るなら、乞食が馬に乗る (If If wishes were horses, beggars would ride)」、すなわち望むだけなら何でもできる、という意味の英語のことわざから来ている。
<hr />
<h3>2. 4つの基本母音</h3>
<p>ロジバンでは、この16の真偽関数のうち4つを基本とし、<span class="tru">A</span>、<span class="tru">E</span>、<span class="tru">O</span>、<span class="tru">U</span>の4つの母音を割り当てる。これらの文字が直接シマヴォやセルマホに対応するわけではなく、論理接続シマヴォの構成要素となる。以下が母音、真偽表、おおまかな意味の対応である:</p>
<pre>
<span class="tru">A</span> TTTF もしくは、片方または両方
<span class="tru">E</span> TFFF かつ、両方
<span class="tru">O</span> TFFT もし、その時に限って
<span class="tru">U</span> TTFF ~に関わらず
</pre>
より正確には:
<pre>
<span class="tru">A</span> 片方もしくは両方の文が真であれば真
<span class="tru">E</span> 両方の文が真であれば真。そうでなければ偽。
<span class="tru">O</span> 文が両方真、もしくは両方偽の場合、真。
<span class="tru">U</span> 最初の文が真であれば、2つめの文の真偽に関わらず真。
</pre>
<p>この4つの母音と、否定、文の交換を使えば、(無用な)TTTT、FFFF 以外の16個の真偽関数を全て創りだすことができる:</p>
<pre>
TTTF <span class="tru">A</span>
TTFT <span class="tru">A</span> (第2文を否定)
TTFF <span class="tru">U</span>
TFTT <span class="tru">A</span> (第1文を否定)
TFTF <span class="tru">U</span> (文を入れ替え)
TFFT <span class="tru">O</span>
TFFF <span class="tru">E</span>
FTTT <span class="tru">A</span> (両方の文を否定)
FTTF <span class="tru">O</span> (第1文か第2文を否定)
FTFT <span class="tru">U</span> (文を入れ替え、第2文を否定)
FTFF <span class="tru">E</span> (第2文を否定)
FFTT <span class="tru">U</span> (第1文を否定)
FFTF <span class="tru">E</span> (第1文を否定)
FFFT <span class="tru">E</span> (両方の文を否定)
</pre>
文の入れ替えが必要なのは <span class="tru">U</span> の場合のみである。他の3つの基本関数は、交換則(文を入れ替えても同じ意味)が成り立つ。他にも同じ真偽表を作る方法があるが、これが通常使われる方法である。
<hr />
<h3>3. 6種類の論理接続詞</h3>
<p>曖昧性を避けるためには、ロジバンには各真偽関数に対して1個だけ論理接続詞を割り当てれば良いわけではない。論理接続が可能な場所はたくさんあり、それぞれに対して適切な接続詞の集合が割り当てられる。(例えば、スムティの接続詞がセルブリに対して使われると曖昧になってしまう)</p>
<p>以下の英語の文を考えてみよう(※):</p>
<pre>
<a id="e1" name="e1">3.1)</a> Mary went to the window and ... (メアリーは窓のところに行ってそして)
</pre>
最後には、“the door”などの名詞句や、“saw the horses”などの主語が省略された文や、“John went to the door”などの完全な文を繋げられる。ロジバンでは、このような文法的ないい加減さは許容されない。
<p>ロジバンでは、5個の異なったセルマホ A、GA、GIhA、GUhA、JA が論理接続に使われる。それぞれに4つの母音に対応して最後の母音のみた違う4つのシマヴォが含まれている。</p>
<p>よって、セルマホ A では、<span class="tru">A</span> の関数を持つものは “a”である。 (Aは<span class="tru">A</span>の真偽値を持つセルマホ、“a”はシマヴォ。混乱しないように。) 同様に、GIhA のセルマホの <span class="tru">E</span> の真偽値を持つものは “gi'e”、セルマホ GA の <span class="tru">U</span> は “gu” である。規則的なため覚えやすくなっている。</p>
<p>明らかに、4つのシマヴォでは第1節の14個の関数を表現するには不十分であるため、複合シマヴォを使う。コアには5つの論理接続セルマホを持つシマヴォが入り、“se” “na”“nai” の補助シマヴォを付ける。どの補助シマヴォをどの論理接続シマヴォと一緒に使い、どのような文法と意味を持つかは以下の節で述べる。</p>
<p>簡便性のため、論理接続用の複合シマヴォにはロジバン名ついている。セルマホの最後の“-A” を “-ek” に変えればよい(なぜ ek かはログラン・プロジェクトの深い歴史に埋もれている)。セルマホ A のシマヴォは ek 、セルマホ JA のものは jek となる。本章で「論理接続詞」と言った場合、これらの種類の複合シマヴォのうちのどれかを指している。</p>
<p>なぜ5個しかセルマホがないのに本節のタイトルは「6個」となっているか、というのは、ロジバンの文の接続詞“.i”が前に付く可能性があるからである。“.i”がついた jek は ijek と呼ばれる。ijek も、ek, jek, gek, gihek, and guhek と並んで6つ目の論理接続詞と考えると便利である。</p>
<p>他にも、論理接続詞ではない gik, joik, ijoik, joigik があり、これらについては後で説明する。</p>
※訳注:ここは英語の原文ではないと文法的曖昧性が明確にならない。
<hr />
<h3>4. ブリディの論理接続</h3>
<p>ここで、 例 1.1をロジバンで言えるようになった。2つのブリディをつなぐ論理接続詞は ijek である:</p>
<pre>
<a id="e1" name="e1">4.1)</a> la djan. nanmu .ija la djeimyz. ninmu
ジョンは男性 もしくは ジェームズは女性。
</pre>
ここで、“la djan. nanmu” と “la djeimyz. ninmu”の2つのブリディが “.ija”, 関数値 <span class="tru">A</span> の ijek で繋がっている。(“.i”の部分を見ると2つの文を繋げていることが分かる。)同様に、以下も言える。
<pre>
<a id="e2" name="e2">4.2)</a> la djan. nanmu .ije la djeimyz. ninmu
ジョンは男性 かつ ジェームズは女性。
<a id="e3" name="e3">4.3)</a> la djan. nanmu .ijo la djeimyz. ninmu
ジェームズは女性 なら、また、その時に限り、ジョンは男性。
<a id="e4" name="e4">4.4)</a> la djan. nanmu .iju la djeimyz. ninmu
ジェームズが女性 かどうかに関わらず、ジョンは男性。
</pre>
<p>他の真偽表を表現するには、要素となる文をどうやって否定するかを知る必要がある。“na”をセルブリの前に挿入して直接否定することもできるが、ロジバンでは論理接続詞に否定を含めることができる。</p>
<p>最初の左側のブリディを否定するには、“na”を JA シマヴォの前、 “.i”の後に付ける。2つ目の、右側のブリディを否定するには、接尾辞 “-nai” を JA シマヴォにつける。否定する語が否定されるブリディの近くに来るようになっている。</p>
<p>例えば、FTTF の真偽値表は、どちらかの文を否定した <span class="tru">O</span> であるため、</p>
<pre>
<a id="e5" name="e5">4.5)</a> la djan. nanmu .inajo la djeimyz. ninmu
ジェームズが女性なら、また、その時に限り、ジョンは男性ではない。
<a id="e6" name="e6">4.6)</a> la djan. nanmu .ijonai la djeimyz. ninmu
ジェームズが女性ではないなら、また、その時に限り、ジョンは男性である。
</pre>
例4.5 と 4.6の意味は、以下と同じである:
<pre>
<a id="e7" name="e7">4.7)</a> ジョンが男性、もしくは、ジェームズが女性であるが、その両方ではない。
</pre>
<p>もう一つ例を挙げる:</p>
<pre>
<a id="e8" name="e8">4.8)</a> la djan. nanmu .ijanai la djeimyz. ninmu
ジョンは男性、もしくは、ジェームズは女性ではない。
ジェームズが女性ならば、ジョンは男性である。
</pre>
この例の4.8の2つの日本語の文は同等なのだろうか。ロジバンの TTFT 真偽値の意味には “BならばA” と書いてあるが、この「もし~ならば」 は通常の自然言語的意味ではない。例4.8 は、ジョンが男性であれば、ジェームズが女性ではなくても真である。同様に、ジェームズが女性ではなければ、ジョンの性別に関わらず真である。この種の「もし~ならば」は専門用語で論理包含と呼ばれている。
<p>ジェームズは、第1節の定義により、女性ではないため、自然言語で言う“ジェームズが女性ならば、ジョンは男性である” は真ではないことを前提としており、真でも偽でもないように思える。この「もし」は TTFT として扱うのが最も便利であり、そうすると例4.8 が真になる。実は、例4.9 も同様に真である:</p>
<pre>
<a id="e9" name="e9">4.9)</a> la djan. ninmu .ijanai la djeimyz. ninmu
ジェームズが女性ならば、ジョンは女性である。
</pre>
一貫した原理として、「正しくない文が真であるならば、それに続くあらゆる文も真である」というものである。自然言語の「もし」を翻訳する際には気をつける必要がある。
<p>例4.10 では TFTT 真偽関数を使っているが、これも「~の場合に限り」は右辺のブリディが偽の場合にのみうまくいくことに注意しよう。もしそれが真なら、左辺のブリディは真でも偽でも関係がない。例4.10の最後の訳文は、「である時に限り」よりもより自然な「もし~ならば」を使っている。</p>
<pre>
<a id="e10" name="e10">4.10)</a> la djan. nanmu .inaja la djeimyz. ninmu
ジョンは男性ではない もしくは ジェームズは女性である。
ジェームズが女性である時に限り、ジョンは男性である。
ジョンが男性ならば、ジェームズは女性である。
</pre>
<p>以下の例は文を反転する “se” の用法である。(5章で“se”の通常の用法が出てくるが、これはブリディの場所構造を反転させるものである)</p>
<pre>
<a id="e11" name="e11">4.11)</a> la djan. nanmu .iseju la djeimyz. ninmu
ジョンが男性かどうかに関わらず、ジェームズは女性である。
</pre>
“na” と “se” の両方をつける場合(これは文法的には問題無いが、必要になることはない)“na”が“se”の前に来る:
<p>ijek の完全な文法は、</p>
<pre>
.i [na] [se] JA [nai]
</pre>
となる(括弧は省略可能であることを示す)。
<hr />
<h3>5. 前置ブリディ接続</h3>
<p>ロジバンの多くの表現は、「前置」と「後置」の2つの方法で表現できる。前節では、「後置ブリディ論理接続」について説明した。「後置」とは、接続シマヴォと2番目のブリディが最初のブリディの形を変えることなく後に接続されるからである。何か文を言い終わった後に追加・説明できる。</p>
<pre>
<a id="e1" name="e1">5.1)</a> la djan. nanmu
</pre>
は完成したブリディであり、後置接続詞をつなげると、
<pre>
<a id="e2" name="e2">5.2)</a> la djan. nanmu .ija la djeimyz. ninmu
ジョンは男性 もしくは ジェームズは女性 (もしくはその両方)
</pre>
となり、前に来るものの形を変えずに情報を追加している。会話では形を変えるのは不可能もしくは現実的ではない(ただし意味は否定接続によって変わる可能性がある)。後置接続によって、重要な真偽関数を全て、色々な方法で表現できる。
<p>前置式では、最初のブリディを表現する前に、論理接続を表現する。前置接続とは異なったセルマホを使う。後置 ijek に対応する前置論理接続詞は gek である:</p>
<pre>
<a id="e3" name="e3">5.3)</a> ga la djan. nanmu gi la djeimyz. ninmu
ジョンは男性 もしくは ジェームズは女性 (もしくはその両方) ※
</pre>
※日本語で書くと例5.2と同じであるが、英語で書くと Either ... or ... となり前置接続の感覚に少し近くなる。
“ga” が論理関数 <span class="tru">A</span> を表現するシマヴォ (セルマホ GA)である。語 “gi” は GA には属さず、それだけのセルマホ GI に属し、2つのブリディを繋げるという役割だけを果たす。“ga ... gi” を英語にすると “either ... or”となるが、英語ではこの真偽関数の意味は “either” と “or” の両方の単語によって表現されている。ロジバンではそうではない。
<p>2つのブリディが繋がっているが、gek, gik に “.i” は含まれていない。文法的には、2つのブリディを接続し単一の文にしてしまう。</p>
<p>他にも例を示そう:</p>
<pre>
<a id="e4" name="e4">5.4)</a> ge la djan. nanmu gi la djeimyz. ninmu
ジョンは男性 かつ ジェームズは女性(というのは真である)
<a id="e5" name="e5">5.5)</a> gu la djan. nanmu gi la djeimyz. ninmu
ジョンは男性であり、これはジェームズが女性であるかどうかには関わらない。
</pre>
例 5.5. では、ジェームズが女性であるか、そうではないかについては表明していないことに注意しよう。 “la djeimyz. ninmu” が真でも偽でも良いと示している“gu” は、それによって影響されるブリディとは分離している。
<p>前置で表現される最も重要な真偽関数は TFTT 、すなわち “もし ... なら ... ”であろう:</p>
<pre>
<a id="e6" name="e6">5.6)</a> ganai la djan. nanmu gi la djeimyz. ninmu
ジョンが男性ではない、もしくは、ジェームズが女性。
ジョンが男性ならば、ジェームズは女性である。
</pre>
例5.6 の“nai”に注意しよう。JA などの後置セルマホに追加された場合、これは2つめのブリディを否定するが、GA に追加された場合、最初のブリディを否定する。
<p>例 5.6を言う場合、なぜ英語(※そして日本語)の場合、前置的な構文になるのだろうか。おそらく、ある文を表明してから、これを条件にする(そしてそれは否定を含む)のは紛らわしいからであろう。最初の文を否定する真偽関数は、後置を使った場合、ロジバン的理解でも紛らわしい。</p>
<p>自然言語の「もし ... ならば」が必ずしもロジバンの“.inaja” や “ganai ... gi”できちんと翻訳できるわけではないのを強調しておきたい。時間の概念を含むものは少し異なった訳となり、これは18章で取り上げる。“豚にエサをやるなら、それは成長する” などの因果関係を表す文は論理接続ではなく、“rinka”を2つの事象抽象化を繋げるセルブリとして使い翻訳する:</p>
<pre>
<a id="e7" name="e7">5.7)</a> le nu do cidja dunda fi le xarju cu rinka le nu ri ba banro
その 事象 (あなた 食べ物-与える 豚に) 引き起こす その 事象 (それ [未来] 成長).
</pre>
因果関係は、9章で詳しく述べられている。
<p>例 5.8と例 5.9は、真偽関数 FTTF の例であり、ここでは1つめか2つめのブリディを否定する必要がある。1つめのブリディを否定する方法は既に学んだ:</p>
<pre>
<a id="e8" name="e8">5.8)</a> gonai la djan. nanmu gi la djeimyz. ninmu
ジョンは男性ではないなら、また、その時に限って、ジェームズは女性
ジョンが男性、もしくは、ジェームズが女性、ただし、その両方ではない。
</pre>
2つ目のブリディは、“-nai” を “gi”につけることで否定できる:
<pre>
<a id="e9" name="e9">5.9)</a> go la djan. nanmu ginai la djeimyz. ninmu
ジョンは男性ならば、また、その時に限って、ジェームズは女性ではない。
ジョンが男性、もしくは、ジェームズが女性、ただし、その両方ではない。
</pre>
“gi” に基づく複合シマヴォは gik と呼ばれている。gik には、“gi” そのものと “ginai”が含まれている。
<p>さらに例を見よう:</p>
<pre>
<a id="e10" name="e10">5.10)</a> ge la djan. nanmu ginai la djeimyz. ninmu
ジョンは男性 かつ ジェームズは女性ではない。
<a id="e11" name="e11">5.11)</a> ganai la djan. nanmu ginai la djeimyz. ninmu
ジョンは男性ではない もしくは ジェームズは女性ではない。
</pre>
gek の文法は、
<pre>
[se] GA [nai]
</pre>
であり、gi (これ自身は接続詞ではなく、前置接続の仕組みの一部)の文法は、
<pre>
gi [nai]
</pre>
である。
<hr />
<h3>6. スムティ接続</h3>
<p>gek と ijek があれば、ブリディを接続するには十分であるが、2つのブリディが共通部分を持つことがある:</p>
<pre>
<a id="e1" name="e1">6.1)</a> la djan. klama le zarci .ije la .alis. klama le zarci
ジョンは市場へ行く。そして、アリスは市場へ行く。
</pre>
ここででは、単一のスムティが異なっているだけであり、ロジバンでは、両方のブリディを完全に表現しなくても良い。
その代わり、両方のスムティを異なるセルマホを持つ論理接続詞で繋いだ単一のブリディによって表現できる:
<pre>
<a id="e2" name="e2">6.2)</a> la djan .e la .alis. klama le zarci
ジョンとアリスは、市場へ行く。
</pre>
例6.2の意味は例6.1と全く同じであり、正確に相互変換が可能である。この規則は、ロジバンの他の論理接続詞でも同じであり(ただし例外が1つある。12節を参照)、全ての論理接続詞が、同じ真偽関数を表す文どうしの論理接続詞に変換できる。
<p>スムティの後置接続詞は ek であり、セルマホ A に属する接続シマヴォを含んでいる。例 6.2 で ijek を使うと、意味が変わってしまう:</p>
<pre>
<a id="e3" name="e3">6.3)</a> la djan. .ije la .alis. klama le zarci
ジョン [は何かをする/何かである]. そして、アリスは市場へ行く。
</pre>
読者はなぜジョンが登場したのか分からないままであろう。
<p>自然言語で直接翻訳するのは難しいかもしれないが、どんな ek であってもスムティの間で使うことができる。</p>
<pre>
<a id="e4" name="e4">6.4)</a> la djan. .o la .alis. klama le zarci
ジョン もし、その時に限って アリス 行く 市場へ。
ジョンは、アリスが市場へ行くなら、また、その時に限って、市場へ行く。
</pre>
例6.3 の訳はとても堅苦しいが、最初の行は素晴らしいロジバン文である。
<p>前置スムティ接続はどうだろう?ブリディ接続と同様に、gek を使う。これらは、単に前置論理接続詞のセルマホであるだけではなく、最も広く使われているものである。</p>
<pre>
<a id="e5" name="e5">6.5)</a> ga la djan. gi la .alis. klama le zarci
ジョンもしくはアリス(もしくは両者)は、市場へ行く
</pre>
ek も、ijek と同様の複合シマヴォを作ることができる。“na” や “se” が含まれているとき、書き方の慣例に気をつけよう:
<pre>
<a id="e6" name="e6">6.6)</a> la djan. na.a la .alis. klama le zarci
ジョン の場合にのみ アリス 行く 市場に
ジョンは、アリスが市場に行くときのみ、市場へ行く。
</pre>
“na.a”のピリオドに注意しよう。A のシマヴォは母音で始まるため、必ず休止が必要である。通常は複合接続シマヴォは単一の語として書くが、この場合は休止を入れないと、“na” と “a” がくっついてしまう。
<hr />
<h3>7. 3つ以上の命題</h3>
<p>これまでは2つの文を繋げる論理接続詞を見てきた。3つ以上の場合はどうするのであろう?これはロジバンでも可能であるが、いくつか注意する点と制限がある。</p>
<p>4つの基本真偽関数 <span class="tru">A</span>, <span class="tru">E</span>, <span class="tru">O</span>, <span class="tru">U</span>, のうち、 <span class="tru">O</span> 以外はその要素文がどのように結合していても同じ真偽値となる。よって、</p>
<pre>
<a id="e1" name="e1">7.1)</a> mi dotco .ije mi ricfu .ije mi nanmu
私 ドイツ人である。 そして 私 お金持ちだ。 そして 私 男性である。
</pre>
は、3つの要素文が全て真であることを示している。同様に、
<pre>
<a id="e2" name="e2">7.2)</a> mi dotco .ija mi ricfu .ija mi nanmu
私 ドイツ人である。 もしくは 私 お金持ちだ。 もしくは 私 男性である。
</pre>
は、3つの要素文のうち1つ以上が真であることを示している。
<p>しかし、<span class="tru">O</span> は異なる。</p>
<pre>
<a id="e3" name="e3">7.3)</a> mi dotco .ijo mi ricfu
.ijo mi nanmu
私 ドイツ人である。 もし、また、その時に限って 私 お金持ちだ。
もし、また、その時に限って 私 男性である。
</pre>
の真偽値は、「私」についてこの3つの全てが成立する、もしくは、いずれも成立しない、ではない。正確な訳は、
<pre>
私は、3つの性質 — ドイツ人であること, 金持ちであること, 男性であること — のうち、ちょうど1つ、もしくは、3つすべてを有する。
</pre>
となる。この直感的ではない結果のため、文が2つより多い時は<span class="tru">O</span>を避けたほうが安全である。また、否定をともなう接続詞も、予期しない真偽値となる。
<p>実際、意図したような「全か無か」は、ブリディのうちどれかを繰り返さなければ、論理接続詞を組み合わせて作ることはできない。例8.10を参照のこと。</p>
<p>他にも、3つ以上の文を使う場合の難しさがある。以下の意味は何であろうか?</p>
<pre>
<a id="e4" name="e4">7.4)</a> mi nelci la djan. .ije mi nelci la martas. .ija mi nelci la meris.
私 好き ジョン。 そして 私 好き マーサ。 もしくは 私 好き メアリー.
</pre>
この意味は、
<pre>
<a id="e5" name="e5">7.5)</a> 私はジョンが好きであり、そして、マーサもしくはメアリー(もしくは両者)が好き。
</pre>
なのか、それとも、
<pre>
<a id="e6" name="e6">7.6)</a> 私は、ジョンとマーサが好き、もしくはメアリーが好き、もしくはその両方。
</pre>
であろうか?正しい翻訳は例 7.6 である。理由は、ロジバンの論理接続詞は、他の文法構造と同様、左から対になっているからである。この左結合則と呼ばれる法則は、直感と反する場合忘れやすい。前置接続詞は、この問題が起きない:
<pre>
<a id="e7" name="e7">7.7)</a> ga ge mi nelci la djan. gi mi nelci la martas. gi mi nelci la meris.
(私は、ジョンとマーサが好き) もしくは、メアリーが好き、もしくはその両方。
</pre>
は、例7.4 の意味と同じである。一方、
<pre>
<a id="e8" name="e8">7.8)</a> ge mi nelci la djan. gi ga mi nelci la martas. gi mi nelci la meris.
私はジョンが好き、そして、(私はマーサもしくはメアリー、もしくは両者が好き)。
</pre>
は、意味は例7.4と同じではないが、例7.5を前置接続詞を使ってロジバン訳したものとして正しい。
<hr />
<h3>8. 後置接続詞のまとめあげ</h3>
<p>例7.5 を、後置のみを使って作る方法がいくつかある。最も簡単なのは、シマヴォ“bo”(セルマホ BO)を使うことである。このシマヴォにはいくつか機能があるが、必ず優先順位・係る範囲の変更と関連がある。特に、“bo” が ijek の後に置かれた場合、通常の左結合則を上書きする、文法的に異なった ijek となる。“bo”のついた接続詞は、ついていない接続詞よりも先に解釈される。例 8.1 は、例7.8 と同じ意味である:</p>
<pre>
<a id="e1" name="e1">8.1)</a> mi nelci la djan. .ije mi nelci la martas. .ijabo mi nelci la meris.
私はジョンが好きであり、かつ、私はマーサが好きもしくはメアリーが好き(もしくはその両者)である。
</pre>
<p>ここの翻訳では、句読点を使ってなんとなく表されているのが、ロジバンでは明確に「マーサが好き」と「メアリーが好き」が“.ija”によって最初に結合されており、その後「ジョンが好き」と“.ije”によって結ばれている。ek に “bo” を同様につけることもでき、例 8.2 の意味は例 8.1 と同じになる:</p>
<pre>
<a id="e2" name="e2">8.2)</a> mi nelci la djan. .e la martas. .abo la meris.
</pre>
<p>前置接続詞は、使うたびにまとめあげの範囲を明確にするため、“bo”をつけることはできない。</p>
<p>“bo”が両方の接続詞に使われ、両方の優先順位を上げたらどうなるであろうか?</p>
<pre>
<a id="e3" name="e3">8.3)</a> mi nelci la djan. .ebo la martas. .abo la meris.
</pre>
“bo”の2つ目のルールは、“bo”が連続で使われた場合、ロジバンの左結合則が右結合則になるというものである。結果として、例 8.3 の意味は例8.1、8.2 と同じになる。この規則はある種の効果のために使われることがあるが、きちんと理解するのが大変であるため、容易に理解できることを意図した文章においては、“bo”のついた接続詞を連続で使うのは避けるべきである。
<p>例7.7、7.8 の訳を振り返ると、まとめあげを明確にするため括弧を使った。ロジバンにもこの括弧に対応するものが2組ある。ijek とともに使われる “tu'e”と “tu'u” と、ek やそれ以外の接続詞とともに使われる “ke” と “ke'e” である。</p>
<pre>
<a id="e4" name="e4">8.4)</a> 私があなたにキスをし、かつ、あなたが私にキスをする。もし私があなたを愛しており、かつ、あなたが私を愛しているのなら。
</pre>
ここでの意味から、「かつ」は「もし」よりも高い優先順位を持っていることが分かる。これを後置で言いたい場合、
<pre>
<a id="e5" name="e5">8.5)</a> mi cinba do .ije[bo] do cinba mi .ijanai mi prami do .ijebo do prami mi
私があなたにキスをし、かつ、あなたが私にキスをする。もし私があなたを愛しており、かつ、あなたが私を愛しているのなら。
</pre>
ijek のうち2つに“bo”をつけ、優先順位を上げる(最初の“bo”は、左結合則のため厳密には必要なく、ここでは括弧で示してある)
<p>しかし、括弧の単語を明確に使い、以下のように言ったほうが分かりやすいかもしれない:</p>
<pre>
<a id="e6" name="e6">8.6)</a> tu'e mi cinba do .ije do cinba mi tu'u
.ijanai tu'e mi prami do .ije do prami mi [tu'u]
( 私があなたにキスをし、かつ、あなたが私にキスをする。)
もし ( 私があなたを愛しており、かつ、あなたが私を愛している。 ).
</pre>
ここで、“tu'e ... tu'u” の組み合わせが構造を強調している。“tu'u”は省略可能であり、テキストの最後では全ての終端詞が省略可能であるため、ここでは括弧で示している。
<p>なお、括弧は汎用性のある解決法である。括弧は複数入れ子にでき、かつ、既存の構造を壊すことなく後置詞を追加できる。この2つは“bo”にはない特徴である。一般的に、後置接続は、単純性のかわりに汎用性を犠牲にしている。</p>
<p>左結合則のため、最初の “tu'e ... tu'u”は省略可能である:</p>
<pre>
<a id="e7" name="e7">8.7)</a> mi cinba do .ije do cinba mi
.ijanai tu'e mi prami do .ije do prami mi [tu'u]
私があなたにキスをし、かつ、あなたが私にキスをする。
もし ( 私があなたを愛しており、かつ、あなたが私を愛している。 ).
</pre>
<p>スムティ接続を括弧でくくる場合は?以下を考えてみよう:</p>
<pre>
<a id="e8" name="e8">8.8)</a> 私は、市場と家、もしくは、学校とオフィスまで歩いていく。
</pre>
例8.6のように括弧の組を2つ使うと良いように思える。しかし、スムティは“ke”で始まらないというロジバンの規則があるため、最初の組は省略しなければならず、例 8.9 のようになる:
<pre>
<a id="e9" name="e9">8.9)</a> mi dzukla le zarci .e le zdani .a ke le ckule .e le briju [ke'e]
私は、市場と家、もしくは(学校とオフィス)に歩いていく。
</pre>
もしスムティが“ke”で始まってもよいとしたら、曖昧性が発生するのは避けられないため、“ke”のまとめあげは論理接続詞の後でのみ許可されている。これは、例8.6のように“tu'e”でブリディをまとめあげる際には適用されない。
<p>ここで、例7.3の問題を扱う道具がそろった。以下の文は正しい意味になっている:</p>
<pre>
<a id="e10" name="e10">8.10)</a> [tu'e] mi dotco .ijo mi ricfu [tu'u]
.ije tu'e mi dotco .ijo mi nanmu [tu'u]
( 私 ドイツ人である。 もし、また、その時に限って 私 お金持ちだ )
かつ (私 ドイツ人である。 もし、また、その時に限って 私 男性である )。
</pre>
この真偽値は、3つの文が全て真、もしくは、全て偽の場合に限って、Tとなる。
<hr />
<h3>9. 複合ブリディ</h3>
<p>これまで、まったく共通部分を持たない2つの文を扱う方法(ブリディ接続)と、一つのスムティのみが異なる2つの文を扱う方法(スムティ接続)を見てきた。ここで、セルブリだけが異なる文を論理接続する方法が気になるのはごく自然である。</p>
<p>なんと!ロジバンにはセルブリだけを扱う論理接続詞が無いのである。その代わり、「複合ブリディ」と呼ばれるより汎用メカニズムの一部として、セルブリ接続ができる。複合ブリディは、セルブリやいくつかのスムティの異なる文どうしを論理接続することにより作られる。</p>
<p>最も単純な場合は、 x1 のみが同一の場合に作られる:</p>
<pre>
<a id="e1" name="e1">9.1)</a> mi klama le zarci .ije mi nelci la djan.
私は市場へ行く、そして、私はジョンが好きだ。
</pre>
この意味は、以下の複合ブリディと同じである:
<pre>
<a id="e2" name="e2">9.2)</a> mi klama le zarci gi'e nelci la djan.
私は市場へ行く、そして、ジョンが好きだ。
</pre>
<p>例9.2 の示す通り、gihek を後置で使い、複合ブリディを使う。ここで、 “klama le zarci” や “nelci la djan.” など gihek が接続しているものは「ブリディ末端 (bridi-tail)」と呼ばれる。セルブリとその後に続くスムティを含み、セルブリの前に来るスムティを覗いたブリディの「末端」を表しているからである。</p>
<pre>
<a id="e3" name="e3">9.3)</a> mi ricfu gi'e klama le zarci
私 金持ちである そして 行く 市場へ
</pre>
<p>例9.3 では、最初のブリディ末端は単一セルブリの“ricfu”であり、次のブリディ末端は、セルブリと後続スムティを含んだ“klama le zarci”である。</p>
<p>2つ以上のスムティが2つの文で共通している場合を考えよう:</p>
<pre>
<a id="e4" name="e4">9.4)</a> mi dunda le cukta do .ije mi lebna lo rupnu do
私 与える その 本 あなたに、 そして 私 受け取る いくつか 通貨単位 あなたから
</pre>
ここでは、最初と最後のスムティが同一である。最後のスムティを最初に持ってくると、例9.2 のようなことが可能である:
<pre>
<a id="e5" name="e5">9.5)</a> fi do fa mi dunda le cukta gi'e lebna lo rupnu
~へ/~から あなた 私 与える その 本を そして 受け取る いくつか 通貨単位
</pre>
ここでは、 “fi”は“lebna” と “dunda”の3番めの場所に置くだけであるため、正確な訳語がない。
ただ、スムティの自然な順番を保持する形式もロジバンにはある。
gihek は2つのブリディ末端を接続するが、ブリディ末端の後にスムティを置くこともできる。これらのスムティは「末端名辞(tail-term)」と呼ばれており、両方のブリディに作用する。例9.4 の直接 gihek 版は、よって、
<pre>
<a id="e6" name="e6">9.6)</a> mi dunda le cukta gi'e lebna lo rupnu vau do
私 (本を与える) そして (いくつか通過単位を受け取る) ~へ/~から あなた
</pre>
となる。
<p> “vau” (セルマホ VAU) は、ブリディ末端と末端名辞とを分割する。ブリディ末端は省略可能な“vau” で終端されるが、複合ブリディの場合しか実際にはこの“vau”を表現する必要はない。よって、</p>
<pre>
<a id="e7" name="e7">9.7)</a> mi klama le zarci [vau]
私 行く その 市場へ
</pre>
は“vau”がひとつ省略されており、例9.2は、
<pre>
<a id="e8" name="e8">9.8)</a> mi klama le zarci [vau] gi'e nelci la djan. [vau] [vau]
</pre>
と同等である。ここで、最後の2つの“vau”は、右側のブリディ末端と、表現されていない末端名辞を終端する。
<p>gihek の最後の用法は、完全な文として使われているブリディ末端を接続するものである:</p>
<pre>
<a id="e9" name="e9">9.9)</a> klama le zarci gi'e dzukla le briju
市場へ行くひと(もの)であり、かつ、オフィスへ歩いていくひと(もの)
</pre>
例9.9の元となったブリディの両方において、x1 が省略されているため、
行くひと(もの)と歩いていくひと(もの)が同じであるとは限らない。x1 が明示的に存在する時に限り(ただし、省略と同等の意味を持つ“zo'e”以外)、その両者が同じであることを強制できる。
<p>A strong argument for this convention is provided by analysis of the following example:</p>
<pre>
<a id="e10" name="e10">9.10)</a> klama la nu,IORK. la finyks. gi'e klama la nu,IORK. la rom.
ニューヨークへフェニックスから行くひと(もの)であり、かつ、ニューヨークへローマから行くひと(もの)
</pre>
もし2つの元となったブリディの x1 の場所が同じであるというルールならば、(x1だけを特別扱いすることはないため)、明示されていない x4 (経路)としてx5 (方法)も同じでなければならず、フェニックスからニューヨークまでの経路とローマからニューヨークまでの経路が同じであるというばかげた結果になってしまう。おおよそ「何か」を意味する“da”をx1の場所に挿入すると、この問題を解決できる:
<pre>
<a id="e11" name="e11">9.11)</a> da klama la nu,IORK. la finyks.
gi'e klama la nu,IORK. la rom.
何かは 行くひと(もの) ニューヨークへ フェニックスから
そして 行くひと(もの) ニューヨークへ ローマから
</pre>
<p>giheksの構文は、</p>
<pre>
[na] [se] GIhA [nai]
</pre>
であり、ek の構文と全く同じである。
<hr />
<h3>10. 複数複合ブリディ</h3>
<p>gihek は、ek と同様に、“bo” で接続することができる:</p>
<pre>
<a id="e1" name="e1">10.1)</a> mi nelci la djan. gi'e nelci la martas. gi'abo nelci la meris.
私はジョンが好き かつ ( マーサが好き もしくは メアリーが好き ).
</pre>
この意味は例8.1 と 8.2 と同じである。同様に、“ke ... ke'e” でグループ化もできる:
<pre>
<a id="e2" name="e2">10.2)</a> mi dzukla le zarci gi'e dzukla le zdani
gi'a ke dzukla le ckule gi'e dzukla le briju [ke'e]
私は 市場へ歩いていく かつ 家に歩いていく
もしくは 学校へ歩いていく かつ オフィスへ歩いていく
</pre>
これは、例8.9 の gihek 版である。“ke ... ke'e”は(スムティ、ブリディ末端とも)接続詞の後でしか使えないので、最初の2つのブリディ末端を明示的にグループ化はできない。
<p>複数の gihek で繋げたブリディ末端は、それぞれ末端名辞を持つことができる。</p>
<pre>
<a id="e3" name="e3">10.3)</a> mi dejni lo rupnu la djan. .inaja mi dunda le cukta la djan.
.ijabo mi lebna le cukta la djan.
もし 私が ジョンにお金の借りがあるなら、 私は本をジョンにあげる
もしくは 私は本をジョンからもらう
</pre>
の意味は、以下と同じである:
<pre>
<a id="e4" name="e4">10.4)</a> mi dejni lo rupnu nagi'a dunda gi'abo lebna vau le cukta vau la djan.
もし 私が ジョンにお金の借りがあるなら、 (あげる/もらう) 本を ジョンへ/ジョンから
</pre>
<p>翻訳はかなり意味不明であるが、ロジバンは完全に文法的である。ここで、“mi”は3つのセルブリの x1 の位置を埋める。 “lo rupnu” は“dejni”の x2、 “le cukta” は “dunda” と “lebna” で共有された末端名辞である。“la djan.” は “dejni” と “dunda gi'abo lebna” で共有された末端名辞である。この場合、“la djan.” を先頭に持ってくるとより明確になる:</p>
<pre>
<a id="e5" name="e5">10.5)</a> fi la djan. fa mi dejni lo rupnu nagi'a dunda gi'abo lebna vau le cukta
ジョンから/ジョンへ, もし私がお金の借りがあるなら あげるもしくはもらう 本を
</pre>
<p>ブリディ末端の前置接続を直接実現する方法は無いが、
前置接続した文の組をブリディ末端として機能させることができ、もちろんセルブリの前に名辞がある必要はない。例えば:</p>
<pre>
<a id="e6" name="e6">10.6)</a> mi ge klama le zarci gi nelci la djan.
私は [かつ] 市場へ行く、かつ、ジョンのことが好き。
</pre>
は、意味としては例9.2 と同じである。
<p>もちろん、文が gihek を含んでいることもある:</p>
<pre>
<a id="e7" name="e7">10.7)</a> mi ge klama le zarci gi'e dzukla le zdani gi nelci la djan.
私は [かつ] ( 市場へ行き そして 家へ歩いていく ) そして ジョンのことが好き
</pre>
gek でつながった組の前に“na”を置くことで全体を否定できる:
<pre>
<a id="e8" name="e8">10.8)</a> mi na ge klama le zarci gi dzukla le zdani
[否定!] 私は [かつ] 市場へ行く そして 家へ歩く
</pre>
<p>gek でつながった文の組はブリディ末端と同等なので、末端名辞が付いても
よい。例9.6の前置版は、</p>
<pre>
<a id="e9" name="e9">10.9)</a> mi ge dunda le cukta gi lebna lo rupnu vau do
私は [かつ] ( 本をあげる ) かつ ( お金をもらう ) あなたから/あなたへ
</pre>
以下は、gek でつながった観察文で、9.9 の前置版である:
<pre>
<a id="e10" name="e10">10.10)</a> ge klama le zarci gi dzukla le briju
[かつ] 市場に行くひと/もの かつ オフィスに行くひと/もの
</pre>
<p>最後に、以下の例は、セルブリに共有された名辞と共有されてない名辞の両方を持つ gek 接続文の例である。</p>
<pre>
<a id="e11" name="e11">10.11)</a> mi gonai le zarci cu klama gi le bisli cu dansu
私 どちらか片方 オフィスへ 行く もしくは 氷の上で 踊る
私は、オフィスへ行くか、もしくは氷の上で踊る。(ただし両方ではない)
</pre>
<hr />
<h3>11. 名辞組の論理接続</h3>
<p>これまで、ブリディ接続(文が完全に異なる)、スムティ接続(一つのスムティだけが異なる)、ブリディ末端接続(セルブリと1つ以上のスムティが異なる)を見てきた。名辞組接続は、セルブリが同じで2つ以上のスムティが異なる場合に使われる。例えば:</p>
<pre>
<a id="e1" name="e1">11.1)</a> 私は、市場へオフィスから行き、家へ学校から行く。
</pre>
<p>これをロジバンで表現するには、2つの名辞組が必要になる。「名辞(term)」とは、スムティもしくは“pu” や “bai”などの間制もしくは法制タグが前に着いたスムティである。
後置名辞組は、名辞をシマヴォ “ce'e” (セルマホ CEhE) で接続することで作られる。さらに、論理接続詞 (jek) にはシマヴォ “pe'e” (セルマホ PEhE) を前に付けなければならない (“pehejek”と言うべきか)</p>
<pre>
<a id="e2" name="e2">11.2)</a> mi klama le zarci ce'e le briju pe'e je
le zdani ce'e le ckule
I 行く 市場へ [プラス] オフィスから [結合] かつ
家へ [プラス] 学校から
</pre>
この直訳では、“[プラス]” は名辞組接続、“[結合]” は論理接続詞結合である。ブリディ結合版(x2 と x3 の場所だけが違う)は、
<pre>
<a id="e3" name="e3">11.3)</a> mi klama le zarci le briju .ije mi klama le zdani le ckule
私は 行く 市場へ オフィスから かつ 私は 行く 家へ 学校から。
</pre>
<p>2つの名辞組の長さが異なる場合はどうだろうか。ブリディ接続へ展開すればどの名辞がどの場所に入るかは明確になる。スムティが、あるブリディの x2 の場所と、もう1つのブリディの x3 の場所に入る場合にこれは起こり得る:</p>
<pre>
<a id="e4" name="e4">11.4)</a> mi pe'e ja do ce'e le zarci cu klama le briju
私 [結合] もしくは あなた [プラス] 市場へ 行く オフィスへ/から
</pre>
は、明らかに、
<pre>
<a id="e5" name="e5">11.5)</a> mi klama le briju .ija do le zarci cu klama le briju
私 行く オフィスへ、 もしくは あなた 市場へ 行く オフィスから
</pre>
なので、“le briju” は「私」の目的地で、「あなた」の起点であり、“klama” の x2 と x3 の場所に同時に入るのである。ここにはセルブリ“klama”は1個しかないが、2つの異なるブリディが表現されているからである。例 11.4 の “mi”は名辞をひとつだけ含む名辞組として機能している。 同じ矛盾は、末端名辞と、接続されたブリディ末端中に数の異なるスムティを持つ複合ブリディに対しても当てはまる:
<pre>
<a id="e6" name="e6">11.6)</a> mi klama le zarci gi'e dzukla vau le briju
私 ( 行く 市場へ そして 歩く ) オフィスから/へ
</pre>
これは、市場へはオフィスから行って、そして、オフィスに歩いていくという意味である。
“le briju” は “klama” の x3 の場所、“dzukla”の x2 の場所である。
<p>前置名辞組も存在する。“nu'i”(セルマホ NUhI)を始めに、“nu'u”(セルマホ NUhU)を最後に(省略可能)つける。各名辞の間には何も挿入してはいけない。論理接続をするには、“nu'i”のすぐ後に gek 、gik の前に“nu'u”をつける:</p>
<pre>
<a id="e7" name="e7">11.7)</a> mi klama nu'i ge le zarci le briju
nu'u gi le zdani le ckule [nu'u]
私 行く [名辞組開始] かつ 市場へ オフィスから
[結合] [そして] 家へ 学校から [名辞組終了].
</pre>
2つ名辞組が接続されているが、“nu'i”はひとつしかつかわれていないことに注意しよう。
<p>論理接続を含まない名辞組の文法的な使い方は、<a href="chapter12.html">12章</a> と <a href="chapter16.html">16章</a>で説明されている。</p>
<hr />
<h3>12. タンル内の論理接続</h3>
<p>9節の最初で述べたように、ロジバンにはセルブリだけを接続する論理接続詞はない。しかし、セルブリ内で論理接続を使い、論理接続をともなったタンル的なものを作ることができる。“blanu zdani”(青い家)を考えよう。そして、青いボールは、かならず、青くてかつボールである。“blanu bolci” と言うかわりに、ロジバンでは “blanu je bolci” と jek 論理接続詞を使って言える。 (jek は 11節でも出てきたが、ここでは “pe'e”を付けずに単独で使う。</p>
<pre>
<a id="e1" name="e1">12.1)</a> ti blanu zdani
これは 青い タイプの 家だ。
<a id="e2" name="e2">12.2)</a> ti blanu je zdani
これは 青く かつ 家である。
</pre>
<p>もちろん、上の2つの例の意味は同じではない。ロジバンのタンルの最も基本的なポイントとして、例12.1 は、</p>
<pre>
<a id="e3" name="e3">12.3)</a> これは、青い居住者のための家だ。
</pre>
という意味かもしれない。この場合、例12.2 と 12.3 の意味は明らかに同じではない。
<p>タンル内の論理接続を完全に説明しようとすると、論理接続一般の話というより、セルブリ構造の話になってしまう。なぜなら、例12.2 は、</p>
<pre>
<a id="e4" name="e4">12.4)</a> ti blanu gi'e zdani
</pre>
と同じであり、
<pre>
<a id="e5" name="e5">12.5)</a> ti blanu .ije ti zdani
</pre>
となるからである。別々のブリディに展開する法則は、タンル接続の場合必ずしも成り立たない。
例えば、アリスが、青い家に住んでいる人であるとすると、
<pre>
<a id="e6" name="e6">12.6)</a> la .alis. cu blanu je zdani prenu
アリスは ( 青く、かつ、家 ) タイプの 人だ。
</pre>
は正しいであろう。(jek は、タンルのまとめあげより優先順位が高い)しかし、
<pre>
<a id="e7" name="e7">12.7)</a> la .alis. cu blanu prenu .ije la .alis. cu zdani prenu
アリスは 青い人 かつ アリスは 家の 人
</pre>
は、「青さ」を持つのは家であってアリスではないため正しくないであろう(アリスが「青い 人」であるというのはどういう意味かというのをさしおいても。青チームに所属しているかもしれないし、青い服を着ているかもしれない)。タンルは意味的に曖昧であるため、こういった論理操作ができないのである。
<p>なので、ここでは、タンル論理接続について純粋な文法点だけを述べるに留めておく。
“bo” は jek にも ek と同様に付けられる:</p>
<pre>
<a id="e8" name="e8">12.8)</a> la teris. cu ricfu je nakni jabo fetsi
テリーは お金持ち かつ ( 男性 もしくは 女性 )
</pre>
タンルの構成要素は“ke”を論理接続詞の前や後につけてまとめあげることができる:
<pre>
<a id="e9" name="e9">12.9)</a> la .teris. cu [ke] ricfu ja pindi [ke'e] je ke nakni ja fetsi [ke'e]
テリーは (お金持ち もしくは 貧乏) かつ (男性 もしくは 女性).
</pre>
最初の“ke ... ke'e”は、左結合則により省略可能である。最後の “ke'e” は省略可能である。
<p>jek の文法は:</p>
<pre>
[na] [se] JA [nai]
</pre>
であり、 ek や gihek と同じである。
<p>タンルの前置接続は、gek の代わりに guhek を使う。guhek は gek と全く同じ形である:</p>
<pre>
[se] GUhA [nai]
</pre>
guhek をタンル接続に使うと、ブリディ末端とタンル接続の曖昧性を解消できる:
<pre>
<a id="e10" name="e10">12.10)</a> la .alis. gu'e ricfu gi fetsi
アリスは [両方] お金持ち [そして] 女性
</pre>
gik は gek と使う場合と同様に使われていることに注意しよう。
jek と同様、guhek は何もないタンルのまとめあげよりも結びつきが強い:
<pre>
<a id="e11" name="e11">12.11)</a> la .alis. gu'e blanu gi zdani prenu
アリスは ([かつ] 青い [そして] 家) タイプの 人
</pre>
これは 例12.6 の前置版である。
<p>描写内で論理接続タンルを使う場合、英語の直感に引きずられないよう注意が必要である。</p>
<pre>
<a id="e12" name="e12">12.12)</a> mi viska pa nanmu .ije mi viska pa ninmu
私 見る 一人の 男、 そして 私 見る 一人の 女
</pre>
を、
<pre>
<a id="e13" name="e13">12.13)</a> mi viska pa nanmu .e pa ninmu
私 見る 一人の 男 と 一人の 女
</pre>
に正しく変換する際には、これを
<pre>
<a id="e14" name="e14">12.14)</a> mi viska pa nanmu je ninmu
私 見る 一人の 男 と 女
</pre>
としてしまいたくなりそうである。しかし、例12.14 が意味するのは、男でありかつ同時に女であもある一つの何かを見たという意味である。“nanmu je ninmu”は「オトコオンナ」、つまり、“nanmu”でありかつ “ninmu”であるというおそらく存在しない生物である。
<hr />
<h3>13. 真偽疑問文と接続疑問文</h3>
<p>これまでは平叙文のみを扱ってきたが、ロジバンでは、自然言語と同様、疑問文を扱う必要がある。質問をする言い方はいくつもあるが、量や時制、感情などを尋ねる言い方は他の章にゆずる。</p>
<p>最も単純な形は、「...というのは真か」という形のもので、これは「真偽疑問文」と呼ばれ、日本語では以下のようになる。</p>
<pre>
<a id="e1" name="e1">13.1)</a> ファイドが犬であるというのは真ですか。
ファイドは犬ですか。
</pre>
真偽疑問文は、「...というのは真か」(英語:Is it true that ...)というのを文の最後につけると作れる。日本語では、実際には、「か」を文末に付けるだけで、より慣例的な疑問を表す言い方ができる。ロジバンでは、このしくみは、シマヴォ “xu” (セルマホ UI)を文頭につけることである:
<pre>
<a id="e2" name="e2">13.2)</a> xu la faidon. gerku
というのは真か ファイド 犬である
</pre>
例13.1 と 13.2 の意味は同じである。
<p>真偽疑問文は、真ならば「はい」、偽であれば「いいえ」でそれぞれ答えられる。ロジバンで「はい」を言う標準的な言い方は“go'i”、 「いいえ」を言うのは“nago'i”である。(理由は7章を参照) 例13.2 への可能な返答には、以下のものがある。</p>
<pre>
<a id="e3" name="e3">13.3)</a> go'i
ファイドは犬だ。
</pre>
and
<pre>
<a id="e4" name="e4">13.4)</a> nago'i
ファイドは犬ではない。
</pre>
<p>英語の文には、見た目が真偽疑問文に似たものがある。例えば、</p>
<pre>
<a id="e5" name="e5">13.5)</a> Is Fido a dog or a cat?
</pre>
表層的には、例13.5 は、以下の平叙文を持つ真偽疑問文のように見える:
<pre>
<a id="e6" name="e6">13.6)</a> Fido is a dog or a cat.
</pre>
例13.6を真偽疑問文の“xu”を使って翻訳すると、以下のようになる。
<pre>
<a id="e7" name="e7">13.7)</a> xu la faidon. gerku gi'onai mlatu
というのは真か ファイド 犬である もしくは 猫である (しかし両方ではない)?
</pre>
ファイドが本当に犬もしくは猫であるなら、正しい返答は “go'i” である。もしファイドが魚ならば、正しい返答は “nago'i”となろう。
<p>しかし、これは例13.5 を発話した人が聞きたいことではない。例13.5の真に意味することは、話者は、内在する2つのブリディのどちらかの真偽値を知りたいということである(どちらか片方だけが真であるという仮定のもとで。)</p>
<p>ロジバンには、英語で使われているのとは異なが、このような質問を作るためのエレガントな仕組みがある。ロジバンでは、ブリディの真偽値を聞く代わりに、それらを接続している真偽関数そのものを聞く。これは、各論理接続セルマホに対して、1つずつ特別な質問シマヴォが割り当てられている:</p>
<pre>
ge'i GA 前置接続疑問
gi'i GIhA ブリディ末端接続疑問
gu'i GUhA タンル前置接続疑問
je'i JA タンル接続疑問
ji A スムティ接続疑問
</pre>
(このリストでは、論理接続シマヴォの規則性から残念なことに外れてしまっている。音節を2つ持つセルマホの GIhA and GUhA では、真偽関数では使われない “-i”で終わるシマヴォになっているが、“gi” と “.i” は使えないため、違うシマヴォを選ばざるを得ない。)
<p>例13.5 を正しく翻訳するには、gihek の疑問詞を使うことになる:</p>
<pre>
<a id="e8" name="e8">13.8)</a> la .alis gerku gi'i mlatu
アリス 犬である [真偽関数?] 猫である?
</pre>
これに対する有りえる返答は、
<pre>
<a id="e9" name="e9">13.9)</a> nagi'e
アリスは犬ではなく、猫である。
<a id="e10" name="e10">13.10)</a> gi'enai
アリスは犬であり、猫ではない。
<a id="e11" name="e11">13.11)</a> nagi'enai
アリスは犬ではなく、猫でもない。
<a id="e12" name="e12">13.12)</a> nagi'o
gi'onai
アリスは犬であるか、もしくは猫であるが、両方ではない。(どちらかとは言っていない)
</pre>
例13.12 は正しいが、協力的ではない。
<p>いつものように、ロジバンの質問文は、疑問詞によって示された空欄を埋める形で答えることができる。ここで、空欄は論理接続詞であり、単に論理接続詞を発話するだけでも文法的である。</p>
<p>アリスが犬でもあり猫でもあるという “gi'e” は現実世界では不可能であるが、以下のような例:</p>
<pre>
<a id="e13" name="e13">13.13)</a> do djica tu'a loi ckafi
ji loi tcati
あなた 欲しい ~について何か ~のまとまり コーヒー
[真偽関数?] ~のまとまり お茶
コーヒーか紅茶はいかがですか。
</pre>
ここで “.e” と答えた場合、つまり、両方欲しいと言うのは完全に有りえることである(が、あまり礼儀正しくはないかもしれない)
<p>前置疑問詞の “ge'i” と “gu'i” も他と同様に使えるが、曖昧性があるため前置疑問詞だけを答えとして単体で答えることはできない。前置で接続されたブリディが始まるように聞こえてしまうのである。そのため、例13.14は例13.13の前置バージョンであるが、</p>
<pre>
<a id="e14" name="e14">13.14)</a> do djica tu'a
ge'i loi ckafi
gi loi tcati
あなた 欲しい ~について何か
[真偽関数?] ~のまとまり コーヒー
[もしくは] ~のまとまり お茶
</pre>
答えは後置のかたちを使わなければならない。
<p>自然言語の中には、中国語のように、ロジバンのような形の接続疑問文を使うものがある。以下の中国語の文</p>
<pre>
<a id="e15" name="e15">13.15)</a> 你走还是跑 (ni<sup>3</sup> zou<sup>3</sup> hai<sup>2</sup>shi pao<sup>3</sup>)
あなた 歩く [もしくは?] 走る?
</pre>
は、 “あなたは歩きますか、それとも走りますか”であり、ロジバンの以下の文とちょうど対応している:
<pre>
<a id="e16" name="e16">13.16)</a> do cadzu gi'i bajra
あなた 歩く [もしくは?] 走る?
</pre>
しかし、中国語でも答えるのに論理接続詞を使うわけではないため、ここでの類似性は表面的なものである。
<p>真偽疑問文は、ブリディ接続に対しても使える。この文の形は完全に文法的であり、答えが「はい」ならば真、「いいえ」ならば偽として解釈される。同様に命令文 (「あなた」を意味するが、文を命令形にする特別な代スムティ “ko”を使った場合)は、その命令に従ったのであれば真、そうでなければ偽となる。アブラハム・リンカーンの依頼は、以下のようになる</p>
<pre>
<a id="e17" name="e17">13.17)</a> ganai ti ckafi gi ko bevri loi tcati mi
.ije ganai ti tcati gi ko bevri loi ckafi mi
もし これ コーヒーである ならば [あなた!] 運ぶ ~のまとまり 紅茶 私に
そして もし これ 紅茶である ならば [あなた!] 運ぶ ~のまとまり コーヒー 私に
これがコーヒーなら、紅茶を持って来ておくれ。ただし、これが紅茶なら、コーヒーを。
</pre>
(※訳注:この言葉は、リンカーンがあまりにも薄くてまずい、コーヒーだか紅茶だか分からないものを出された時に言った言葉であるそうだ。)
論理的にいえば、「ただし」“but”は、“and”と同じであり、違いは前の文との違和感、相違のようなものである。ロジバンでは、この違いを、談話シマヴォ“ku'i” (セルマホ UI, 13章で解説)を、論理接続詞 “.ije” に追加することにより表現する。
<hr />
<h3>14. 非論理接続</h3>
<p>1節で、“and”(そして)、や、“もし...なら...” が必ずしもロジバンの論理接続を表現するわけではないことを説明した。特に、以下の “and” (と)を考えてみよう:</p>
<pre>
<a id="e1" name="e1">14.1)</a> John and Alice carried the piano.(ジョンとアリスがピアノを運んだ)
</pre>
ピアノの性質を考えると、これはおそらくジョンが片方を持ち、アリスがもう片方を持って運んだということであり、以下とは違うことになる:
<pre>
<a id="e2" name="e2">14.2)</a> John carried the piano, and Alice carried the piano.(ジョンはピアノを運んだ。アリスもピアノを運んだ。)
</pre>
これは、彼らがそれぞれピアノを運んだということになる。ロジバンでは、この特定の「群」という言語現象を扱うことができる。ジョンとアリスが一緒に群「ジョン&アリス」を成し、別々にではなく、その群がピアノを運んだということになる。シマヴォ“joi” (セルマホ JOI) が、複数の構成要素を群にまとめる役割を果たす。
<pre>
<a id="e3" name="e3">14.3)</a> la djan. joi la .alis. cu bevri le pipno
ジョン [群] アリス 運ぶ その ピアノ
</pre>
<p>例14.3 は、二人が協力して運んだことを意味している。もしかしたら、ジョンが運搬を、アリスがその監督をしたのかもしれない。このような可能性は、群の性質はその構成要素の性質であるという性質に起因している。これは、明らかに矛盾を引き起こす可能性がある。もしジョンが小さくアリスが大きければ、「ジョン&アリス」小さくかつ大きいということになる。群については6章でも議論されている。</p>
<p>文法的には、“joi” は、ek と同様に2つのスムティの間か、jek と同様に2つのタンル要素の間に使うことができる。この柔軟性のせいで、時々終端詞を省略できないという代償を払わなければならない。</p>
<pre>
<a id="e4" name="e4">14.4)</a> le nanmu ku joi le ninmu [ku] cu klama le zarci
その男 [群] その 女性 行く その 市場へ
</pre>
<p>シマヴォ “ku” は “le”の省略可能な終端詞であり、ほとんどの場合で省略可能であるが、この場合はそれができない。もし最初の “ku” を省略すると、構文解析ルールが “le nanmu joi” を最初に受け取り、他のタンル要素が次に来ると予測してしまう。2つ目の “le” はタンルの要素になり得ないため、構文解析エラーが起こる。論理接続詞では、ek はスムティ、jek はタンル要素が来ることを明確に区別するため、このような問題は起こらない。</p>
<p>セルマホ JOI の単一のシマヴォもしくは複合シマヴォは joik と呼ばれている。joik を使ってブリディ末端を接続するのは文法的ではない。</p>
<p>タンルでは、“joi” は “~と混ざって”という意味を持つ:</p>
<pre>
<a id="e5" name="e5">14.5)</a> ti blanu joi xunre bolci
これ ~である(青 ~と混ざって 赤) ボール
これは、赤と青の混ざった色のボールだ。
</pre>
ここで、ボールは完全に青や赤ではなく、部分的に青でありかつ部分的に赤である。(ただ、何か青いものが「完全に青」というのはどういうことか、という疑問は解決していない。例えば「青い家」は、一部が青でも“blanu zdani”と言えるかもしれない。)
<p>他にも、同じような文法構造において使えるセルマホ JOI に属するシマヴォがある。あらゆる文脈においてきちんと定義されているわけではない。スムティ接続詞としては明確な定義がある:</p>
<pre>
A joi B A と B を構成要素に持つ群
A ce B A と B を要素とする集合
A ce'o B A と B を、この順で要素とする並び
A sece'o B B と A を、この順で要素とする並び
A jo'u B A と B を一緒に見なして
A fa'u B A と B それぞれ
A sefa'u B B と A それぞれ
A jo'e B 集合 A と B の和集合
A ku'a B 集合 A と B の積集合
A pi'u B 集合 A と B の外積
A sepi'u B 集合 B と A の外積
</pre>
<p>シマヴォ “se” は、どの JOI につけても文法的であるが、順序を持つものに対してでないと意味がない。以下は joik の例である:</p>
<pre>
<a id="e6" name="e6">14.6)</a> mi cuxna la .alis. la frank. ce la .alis. ce la djeimyz.
私 選ぶ アリス フランク [と要素] アリス [と要素] ジェームズから
私は、フランク、アリス、ジェームズからアリスを選ぶ。
</pre>
“cuxna” の x3 は、選択元の集合である。集合(set) は、その要素を指定することで決定される抽象的なものであり、群とは違い、集合の性質はその要素の性質とは無関係である。この章では、集合論については説明しない。
<p>例14.6 では、要素を列挙し、それらを“ce”でつなぐことで、その集合を規定した。</p>
<pre>
<a id="e7" name="e7">14.7)</a> ti liste mi ce'o do ce'o la djan.
これ リストである 私 [と並び] あなた [と並び] ジョン
これは、あなた、私、ジョンのリストである。
</pre>
“liste” の x2 は、リストで述べられている並びである。(ちなみに、“lo liste” はおつかいメモのような物理的な物体で、純粋に抽象的なリストは、並びを表す “lo porsi”である。) ここでは、“ce'o” でつなげられた3つのスムティは、集合や群のように単にまとめられているのではなく、明確な順序を持っている。
<p>よって、“joi” “ce” “ce'o” は、個体のスムティを繋げ、その結果は何か別のもの(それぞれ群、集合、並び)になるという点で対応している。 “jo'u” は、このパターンに沿う4つめの要素である。繋げるスムティは個体であり、結果もなお個体である。ただし、不可分の個体である。ジェームズとジョージが兄弟であると言うのに、通常のロジバンでは、</p>
<pre>
<a id="e8" name="e8">14.8)</a> la djeimyz. bruna la djordj.
ジェームズ 兄弟である ジョージの
</pre>
となる(「逆もまた真なり」を意味する談話系(※訳注 soi)を挿入してもよい。しかし、“ジェームズとジョージは、お互いに兄弟である”というのは、
<pre>
<a id="e9" name="e9">14.9)</a> la djeimyz. .e la djordj. bruna
ジェームズ と ジョージは 兄弟である
</pre>
としては正しく翻訳できない。なぜなら、これを2つのブリディに分解すると、ジェームズは(誰かの)兄弟であり、ジョージもそうであるが、お互い兄弟どうしとは限らないからである。しかし、“.e” を “jo'u”に変えると、例 14.8 の意味は保たれる。
<pre>
<a id="e10" name="e10">14.10)</a> la djeimyz. jo'u la djordj. cu remei bruna
ジェームズ [一緒に見なして] ジョージ 2人の 兄弟
</pre>
“remei bruna” というタンルは厳密には必要ではないが、ジェームズとジョー
ジは、ここでは言及していないある他の3人目の兄弟ではないということを明確
にしている。もしくは、タンルを反転させてもよい。“remei”の x1 の場所は2つの要素を持った群であるので、
<pre>
<a id="e11" name="e11">14.11)</a> la djeimyz. joi la djordj. cu bruna remei
ジェームズ [群] ジョージ 兄弟 [的な] 2人のもの
</pre>
とできる。ここでは、 “joi” は、群を作るために必要である。
<p>同様に、“fa'u” は、順序が重要な時に、2つの個体をまとめるのに使う。通常、同じブリディ中のどこかにもう1個の “fa'u” がある。</p>
<pre>
<a id="e12" name="e12">14.12)</a> la djeimyz. fa'u la djordj. prami la meris. fa'u la martas.
ジェームズ [一緒に、順に見なして] ジョージ 愛する メアリー [一緒に、順に見なして] マーサ
ジェームズとジョージは、それぞれ、 メアリーとマーサを愛している。
</pre>
ここで、「それぞれ」という副詞(と句読点)の表現している情報(ジェームズがメアリーを愛し、ジョージがマーサを愛している)は、2回出現する“fa'u”が担っている。もしこの “fa'u” を “.e” に変えると、
<pre>
<a id="e13" name="e13">14.13)</a> la djeimyz. .e la djordj. prami la meris. .e la martas.
ジェームズ と ジョージ 愛する メアー と マーサ
</pre>
となり、これは、以下の4つのブリディになる:
<pre>
<a id="e14" name="e14">14.14)</a> la djeimyz. prami la meris. .ije la djordj. prami la meris.
.ije la djeimyz. prami la martas. .ije la djordj. prami la martas.
ジェームズ 愛する メアリー そして ジョージ 愛する メアリー
そして ジェームズ 愛する マーサ, そして ジョージ 愛する マーサ
</pre>
これは、例14.12 とはだいぶ異なった状態である。例14.12 の意味は、名辞組を用いて、
<pre>
<a id="e15" name="e15">14.15)</a> la djeimyz. ce'e la meris. pe'e .e la djordj. ce'e la martas. prami
ジェームズ [プラス] メアリー [結合] そして ジョージ [プラス] マーサ 愛する
</pre>
とも言える(順番を入れ替えペアを明確にしなければならないが)。これは、片方のリストが列挙されていないときには使えない:
<pre>
<a id="e16" name="e16">14.16)</a> la djeimyz. fa'u la djordj. prami re mensi
ジェームズ [一緒に、順に見なして] ジョージ 愛する 2人の 姉妹を
</pre>
これは、ジェームズが姉妹のうち一人を、ジョージがもう一人を愛する(ただし、どっちがどっちかは分からない)という意味になる。
<hr />
<h3>15. 非論理接続について詳しく</h3>
<p>最後の3つ、“jo'e” “ku'a” “pi'u”は、それぞれ和集合、積集合、直積に対応し、集合に言及している時にしか使わない。和集合は、どちらかに含まれている要素からなる集合、積集合は、両方に含まれている要素からなる集合、積集合は、両方の集合から取った要素のペアからなる集合である。</p>
<pre>
<a id="e1" name="e1">15.1)</a> lo'i ricfu ku jo'e lo'i dotco cu barda
集合 金持ち 和集合 集合 ドイツ人 大きい
<a id="e2" name="e2">15.2)</a> lo'i ricfu ku ku'a lo'i dotco cu cmalu
集合 金持ち 積集合 集合 ドイツ人 小さい
</pre>
論理学と集合論は対応しており、以下のようにしても等価である:
<pre>
<a id="e3" name="e3">15.3)</a> lo'i ricfu ja dotco cu barda
集合 金持ち もしくは ドイツ人 大きい
</pre>
<pre>
<a id="e4" name="e4">15.4)</a> lo'i ricfu je dotco cu cmalu
集合 金持ち かつ ドイツ人 小さい
</pre>
<p>以下の例文の “se remei” は、要素を2つ持つ集合である:</p>
<pre>
<a id="e5" name="e5">15.5)</a> la djeimyz. ce[bo] la djordj. pi'u la meris. cebo la martas.
cu prami se remei
ジェームズ [と要素] ジョージ [直積] メアリー [と要素] マーサ
愛する ペアである
</pre>
この意味は、ジェームズ/メアリー, ジョージ/メアリー, ジェームズ/マーサ, ジョージ/マーサはお互いに愛しあっているということで、例14.13 と似ているが、例14.13 では男性が女性を愛しているだけである。
<p>joik は、論理接続詞の ek や jek と同様に“bo” や “ke”と一緒に使うことができる。</p>
<pre>
<a id="e6" name="e6">15.6)</a> mi joibo do ce la djan. joibo la djein.
cu gunma se remei
(私 [群] あなた) [と要素] (ジョン [群] ジェーン)
群である 2つの集合
</pre>
この文は、群である要素を2個持つ集合が1個あるということを言っている。
<p>非論理接続によって名辞組をつなげ、複数の名辞を関連付けることができるので便利である。“casnu”の場所構造は:</p>
<pre>
casnu: 群 x1 が、x2 について話す/議論する
</pre>
であるため、x1 には群が来る必要がある(その理由はここでは説明しない)。しかし、群の構成要素が、それぞれ異なる言語で話しているかもしれない。したがって、
<pre>
<a id="e7" name="e7">15.7)</a> mi ce'e bau la lojban.
pe'e joi do ce'e bau la gliban. nu'u casnu
( 私 [プラス] ~語で ロジバン
[結合] あなた [プラス] ~語で 英語で ) 話す
</pre>
のように言うこともできる。